四章から少し時間が進みます。
この間の話もあることにはあるんですが、それはまあ番外で。
今回も仔ギン健在でございます。
でもうちの仔ギン…よく怒鳴るなあ…。
「…そろそろ、か」 「…そうですね」 「あ…到着」 「──────意味不明やッ!!!」 流魂街の外れにある一護の隠れ家。 そこに、ドカドカと派手な足音を立ててスパーンと襖を開け放ち、憤怒の表情を浮かべたギンの開口 一番の言葉がそれだった。 「ほら、な」 ギンを指さしながらそう言ったのは一護。 「なしてボクが三番隊やないねやッッッ!!!」 「惜しい。ここか」 これは藍染。 「なしてボクがこのオッサンの下に付かなアカンねんッッ!!!」 「チッ…」 眉を顰めて東仙が舌打ちする。 「なしてボクが、三番隊やのうて、五番隊に行かなアカンねや─────ッッッ!!!!!!」 怒髪天を衝く勢いで最後にそう叫んだギンを余所に、三人はそれぞれの表情を浮かべながら呑気に茶を啜っていた。 「だから言ったろ。絶対そうくるって」 「うーん。大穴狙いかと思ったんですがねぇ…」 「最後に言うくらいなら、いっそ言わなければいいものを…」 上から順に、一護、藍染、そして東仙。 にこやかに笑う一護に藍染は顔を顰め、東仙は珍しく不機嫌そのもので吐き捨てるように言う。 「んじゃ、きっちり回収させて貰うからな。次忘れんなよ」 一護の言葉に渋々と頷く二人。 まるっと無視された形のギンは、その様子を一瞬ぽかんと口を開けて見ていたが、やがてフルフルと肩を震わせて再び癇癪を起こしたように叫んだ。 「一体、何の話してんねやッ!?」 その声に漸くギンの方を振り返った一護がしれっと言う。 「なにって、賭け」 「…は?」 「お前が、開口一番に何を言い出すか…ね。まったく、一護様の一人勝ちだよ」 そう言って藍染が深々とため息を吐く。 「なんだ、"意味不明"と言うのは。なんでそう言う事を先に言う」 苦虫を噛み潰したような顔でそう言う東仙は、余程自信があったのか掛け金が高かったのか背中に おどろまで背負っている。 ちなみに賭けた言葉はそれぞれ、 藍染が『なんでボクが三番隊じゃないんや!』 東仙が『なんでボクが五番隊なんや!』 一護一人がそれとは全く違う『意味不明や!』と言う言葉だった。 「あんたら…ボクをダシに何してんの……」 地獄の底から這い出てくるような声でギンが大人三人を睨み付ける。 「人の人生最大の不幸をネタに、何賭け事やってんねや──────っ!!!!!」 益々怒り狂うギンを余所に、性の悪い三人の大人はしれっと茶菓子を食べ茶を啜っていた。 今日はギンの護廷入隊日だった。 通常、霊術院から護廷に上がる場合、護廷への入隊試験が行われそれに合格した者のみが入隊 を許される。 だが、まれに成績優秀な者になると直接の推薦という形で護廷へと引き抜かれる。 そしてギンは、その稀な推薦枠で、今回護廷への入隊を許されていた。 推薦の権限があるのは副隊長以上。そして、今回ギンを引き抜いたのは三番隊隊長である一護… だとギンは思っていた。 護廷への入隊が許可されていたとはいえ、実際の配属は入隊式を済ませた後正式発表となる。 それは推薦枠であろうと変わらない。 だが実際は、どこの隊でも常に優秀な人材を欲している為、その推薦人が自隊に配属させる事が 慣例となっていた。 だから、ギンは今日の今日まで信じて疑わなかったのだ。 自分が配属されるのは一護のいる三番隊なのだと。 だが、蓋を開けてみれば。ギンを推薦したのは、一護ではなく五番隊副隊長の藍染だった。 そしてその慣例通り、ギンは五番隊に配属される事となったのだ。 「なして推薦したんが一護ちゃんやのうて、このオッサンなん!?そんなんボク聞いてへんでッ!!」 思いっきり藍染を指さしながらそう言うギンに、些かうんざりした様子で藍染が口を開く。 「ギン、いい加減にしないか」 それにギンは吐き捨てるように言った。 「こんなオッサンからの推薦なんていらへんわっ!!なんでなん!?一護ちゃんッ!!」 「──ギン」 がなり立てるギンを一言で諫めて、一護がふぅとため息を吐く。 「惚右介、要。今日はもう帰っていいぜ。後は俺から話す」 「ですが…」 ちらりとギンを見て藍染が眉を顰める。 そして東仙も、席を立とうとはしなかった。 こうなる事が分かっていたとはいえ、ギンの我が侭と強情さはもう嫌という程身に染みている。 いくら子供だとは言っても、真っ向から一護に楯突く姿を目の当たりにすると、どうしても二人は心情 的に許容し難いものを感じてしまう。いくらそれを一護が許しているとしても。 「いい。どうせお前らが居たって言うこと聞かないのは同じだし、お前らが居ると返って意固地になる。面倒だ」 一護の言葉に、先程のようにがなり立てる事はしなくなったものの、ギュっと唇を噛んで睨み付ける ように一護を見つめているギンをちらりと一瞥して、藍染が諦めたように肩を落とした。 「──分かりました。要、帰るぞ。」 「一護様」 「──要」 ギンの視線を真っ向から受け止めて、一護が動こうとしない東仙を促す。 それに渋々と従う形で漸く東仙も重い腰を上げた。 一護を睨み付けたまま微動だにしないギンの横を二人が通り過ぎ、気配が消えてからもギンはじっ と一護にキツイ視線を向けたまま口を開こうとはしなかった。 「ギン──。いい加減にしろ」 ふぅっとため息を吐きながら、一護がざっくりと髪を掻き上げる。 それにもギンはきつく唇を噛みしめたまま、動く事も喋る事もしない。 その様子に構うこともせず、一護が話し始めた。 「お前が今ここで何を言っても同じ事だ。それに…一体いつ俺がお前を三番に入れると言った?」 「詐欺やろ…そんなもん…」 ボソっと零すように言うギンの台詞に、一護が含み笑う。 「確かめなかったお前が悪い」 「確かめとっても変わらへんかったくせに」 「よく分かってるじゃねぇか」 ニヤリと口の端を上げる一護に、ギンがぶすっとしたまま肩を竦めた。 一護の言う通り、今ここで文句を並べたとしても状況が変わるわけではない事はギンも分かっている。 だが、分かっているからこそ言わないと気が済まない事もあるのだ。 「取り敢えず落ち着け。旨い茶でも淹れてやるよ」 「いらへん」 立ち上がった一護の背にそう言うギンを無視して、一護はさくさくと茶葉を変え、きちんと湯冷ましを 使って香り立つ玉露を二人分均等に入れると、ギンの目の前に湯飲みを置いた。 「ほら、ギン」 とにかく座れと促す一護に、渋々ギンが腰を下ろす。 そこで一際大きくため息を落とすと、零すように言った。 「なんでなん…」 がっくりと力が抜けたように下を向くギンに、一護は一口茶を含むと静かに、それでもきっぱりと言う。 「うちの隊は既に今優秀な隊士で埋まってる。今んとこ俺は誰も移動させる気はないし、新人を迎え るつもりもない。今護廷で一番人材が不足しているのは五番隊だ。そこにお前が入る事に何の問題 がある?お前が俺の隊に入れると思ってたのは、単なるお前の思い込みだ。俺はお前にそんな約 束なんかした覚えもなければ、まして確約した訳でもない。一方的な思い込みで充てが外れて怒る のはお前の勝手だ、ギン」 「ボクに副隊長になれ言うた…」 一護の言葉に反抗するようにギンが言う。 それに些か呆れたように一護が肩を竦めた。 「すごい自信だな。入隊早々副官が務まる…か。ヤレヤレ、護廷も舐められたもんだ」 「そうやない…ッ!やから、そん為に三番に…」 「お前、ずっと五番隊に居るつもりなのか?」 再び声を荒げ始めたギンの目を一護が見据える。 「え…」 その言葉に、虚を突かれたようにギンの口が開いた。 「誰が最初に入った隊にずっと居ろと言った?お前は惚右介の裏の顔しか見てないからそうは思え ねぇかも知れないけど、あいつは人を育てる事に関しては優秀だ。あいつの下に付くのは良い勉強 になるだろうよ。それに…あそこは平子の隊だ。お前が育つ環境として五番隊ほどいい所はない」 「そんなん…」 「俺がお前に手を貸してやるのは護廷に入るまでだ。後は自分でなんとかしろ。そんな下らねぇ事で いつまで経っても拗ねてるような餓鬼に用はねぇよ。──後は勝手にしな」 そう言い捨てて唇を噛むギンを置いて、一護はさっさと部屋を出て行った。 いつまで経っても戻ってこない一護に、ギンは温くなった湯飲みを飲み干して意を決したように立ち 上がった。 そして、水音が立つ風呂場の前に立つと、ギンはすぅっと息を吸い込んだ。 「…一護ちゃん…」 中から返る返事はない。だが、ギンは構わず続けた。 「ごめん…一護ちゃん…。入っても…ええ?」 そう言ってカラリと風呂場の戸を開けると、湯船に背を預けていた一護がちらりとギンに視線を向けた。 「閉めろ、ギン。寒い」 「うん…」 コクっと頷いてギンは一歩中に入り云われた通り戸を閉める。 「誰が中に入っていいと言ったよ…」 呆れたように言った一護だったが、それでも咎める事はしなかった。 ぐっと手を握りしめたまま、中々口を開かないギンにそれっきり視線を向ける事もせず、一護は掌で 湯を掬っては指の間から零れ落ちる雫をぼんやりと眺める。 パタパタと小さな水音が立ち、湯船に小さな波紋が現れては消える。 入浴剤で少し濁りの入った湯は一護の身体をほんのり色づかせ、しなやかな肢体に艶を与えていた。 「…ボク…強うなったる…」 ポツリと零すように言うギンの言葉に、一護は何も言わずに目を閉じていた。 「絶対に、強うなって、力付けて…副隊長まで上り詰めたる…っ」 絞り出すようにそう言うギンの声を聞きながら、一護がゆっくりとその瞳を開く。 そして、ギンにちらっと視線を送ると、浴槽の縁に身体を凭れ掛けたまま、艶っぽい声で言った。 「ギン…。お前が本当に欲しいものって…何だ?」 瞳に色を含み、誘うようにそう言った一護に、ギンは間髪置かずにその答えを返した。 「…一護ちゃんや」 きっぱりとそう言い切るギンに、一護が含み笑いを落とす。 そして、今度は、ギンの目を見据えながら、すいっとその手を伸ばした。 「ふうん…。だったら…来いよ、ギン…。いいぜ、やるよ…。──俺が、欲しいんだろ?」 ゾクリと、背筋が震える程の婀娜めいた笑みを浮かべて一護が誘う。 上気した頬。濡れて艶めいた肌。赤く色づいた舌が開いた唇から誘うように蠢く。 思わず直視できなくなる程の、男とも女ともつかない一護の匂い立つような色気。 それにふらりと手を延ばしそうになって、ギンはありったけの理性を掻き集めて、唇を噛むと首を横 に振った。 「…いやや…」 グッと拳を握りしめて拒絶を吐くギンに、一護がクスリと笑う。 「なんで?」 いっそ無邪気にそう言う一護に、ギンは振り絞るような声で言った。 「…餓鬼と寝る気なんてあらへんて……前に言うた」 「……そうだっけ…?」 んな事言ったっけな…と、思い返すように一護が視線を遊ばせる。 そしてギンに向かって延ばしていた手を再び湯船に沈め、その濡れた手でざっくりと髪を掻き上げた。 「なんだ、そんな事気にしてんのお前?いいぜ、別に。前にそう言ったかも知れねぇけど、元々俺は そんな禁忌持ち合わせちゃいねぇよ。──俺を…満足させてくれんだろ…?ギン?」 髪から落ちる雫が一護の顔を濡らしていく。 これ以上視界に映したら、確実に自分の理性が飛ぶ…と、ギンはふいっと一護から視線を反らせた。 その精一杯の拒絶を笑うように、一護は艶めいた声で言う。 「お前が、俺の事欲しいってんなら、抱いていいって言ってるんだ。…どうした?お前の望みは、俺 なんだろ?」 「やから──ッ!いらん言うてるやろッッッ!!」 尚も誘いかける一護に、我慢ができず、ギンが叫んだ。 「こんな…こんな状況で、やる言われてホイホイ乗るとでも思うてるん!?…ああ、抱きたいでッ!? メチャメチャに犯したいわっ!せやけど…こんなんは、イヤやっ!!」 「……なんで」 ギンの叫びに、それまで妖しい色を含んでいた一護が、ガラリと口調を変えた。 その変化に、ギンがふうっと息を吐く。一護の誘いに限界寸前だった理性と頭が、その口調で少し 冷静さを取り戻した事にほっとする。一つ大きく深呼吸をして、身体の内に籠もった熱を逃がすと、 やっとギンが一護に向き直った。 「ボクが一護ちゃん欲しい言うんは、今も昔も変わらへん。やけどな、ボクをただの餓鬼やと思わんと いて」 「──餓鬼みたいに拗ねまくった奴が言う台詞じゃねぇな」 「……拗ねもするわ…。ボクは、ホンマに一護ちゃんの側居りたいて…そう思うて死神になったんや。一護ちゃんの副官になることだけが、ボクの願いで…そん為に、あんな面白ろない学校まで行った んや。ボクが甘い言うんは、ホンマその通りなんやろうけど…でも、護廷に入りさえすれば、一護ちゃんの側にずっと居れるんやって…そう思うてたんよ」 ぐっと奥歯を噛みしめるように零すギンの言葉を、一護は何も言わずにじっと聞いていた。 自分の考えが、つくづく甘かったのだという事は、ギンにだって分かっている。 いや、思い知らされたというほうが正しいだろう。 最初から一護は、自分の力で上がって来いと常日頃からギンに言っていた。 それでも、自分の力を見込んで、一護が副官という座をギンに望んだということは、それまで何一つ …生きる縁さえ持たなかったギンにとっては福音に等しいものだったのだ。 「今のボクが…一護ちゃんの副官になるには、まだまだやって言うのはよう分かった。やから、ボク は絶対に自分の力でそこまで上がったる。誰にも文句は言わせへん。ボクが…一護ちゃん抱くんは …それからや」 そう言って、改めて一護を見据えたギンの蒼い瞳は子供の片鱗すらなく…一護を欲する男の情念 が宿っていた。 「…そりゃ…結構な我慢だな、ギン…」 暗に、それだけの長い月日が掛かるという一護の言葉に、ギンはツィ…と口角を引き上げる。 それは…一護の前ではほとんどみせた事のない、ギンの…挑発的な笑みだった。 「何言うてんねや…。ボクがそんな長く我慢するとでも思うてるん…?そんなん、すぐやで。一護ちゃ んにも分かってるやろ?」 ニィと他人が見たら怖気るような笑みを湛えてギンが嗤う。 その時がきたら、一護が何と言おうと容赦なく一護をものにすると、そう言い切るギンに、一護が目 を細めた。 「…まあ、楽しみにしてるよ…。ああ、それとな、ギン」 再び、掌で湯を掬い、パチャパチャと遊びながら一護が謳うように告げる。 「俺は、自らお前を副官に据えるつもりはねえから…そのつもりでいろよ?」 その言葉に、ギンの唇がぐっと引き結ばれた。 「うちの隊には、今優秀な副官がいる。俺はそいつを自分から降格させるつもりもねぇし、そいつが居る限り 、他隊のお前を自分の副官に据えるつもりもねえ。…意味は分かるな?ギン」 「──分かった」 二人きりの湯殿で──まるで睦言のように囁かれる悪魔の誘惑。 つまり、現在の副官が居る限り、ギンにはその座は巡ってこないと言うこと。 欲しければ…自分の力でどうにかしろと、一護はそう仄めかす。 「言っておくが…それくらいの策略は自分で巡らせろ。俺はそれに関しては一切関知しない。当然、 惚右介も要もだ。少しでも証拠を残すような遣り方をしたら、俺はお前を糾弾する立場に居るという 事を忘れるな。その時は…分かるな、ギン」 一護の言葉に、ギンが頷く。 一護の副官の座が欲しければ、それは奪い取るしかない。奪い取るという事は…現在の副官を亡 き者にするという事。一隊の副隊長を葬り去るという事は──それも、一護率いる三番隊──護廷 でも飛び切りの精鋭部隊の副隊長を殺し、その証拠さえ残さずに自分がその位置に座るという事 は、今のギンにとっては途轍もなく困難な状況だ。 流石に藍染には及ばずとも、長年一護の副官を務めているだけあって、その力も、智恵も普通の 死神など引いても及ばない人物だ。それでも、ギンには自信があった。 いつか──そう遠くない未来に、自分がその首を取るだろうという事は。 「そんな事、言われんでも分かっとる。大体…ボクがそんなヘマするような間抜けに見えるん…? 心外やわ」 いっそ自信を漲らせてそう言うギンに、一護は面白そうに笑った。 言外に、自分の副官を殺せと命じたその口で──。 「…だったら上手くやれよ。──ギン」 薄っらと硝子玉のような琥珀をギンに向けて、一護が笑う。 まったく感情の篭もらないその寒々しい程の透明な瞳がギンを映す。 その瞳に惹かれるように、ギンがすっと一護の側へと歩み寄った。 そして、まだ少年の細い指先が一護の滑らかな頬に触れる。 「平気や…。一護ちゃんにボクを殺させるような…そんな悲しい事なんかさせへんよ…」 まるで愛撫するように一護の唇を親指で擦る。 「……我慢するんじゃなかったのかよ…」 「これだけや…」 そのまま顔を近づけたギンに、一護は抵抗する事もなく、そっと瞳を閉じる。 軽く啄むような口吻を何度か受けた後、するりと濡れた舌が一護の唇を割って口腔に潜り込んだ。 舌を絡め、口腔を余す所なく舐め回すギンの舌に、一護が自ら舌を差し出す。 貪るように口吻けられ、与えられるギンの熱と湯の熱さに、一護の頭がぼうっと痺れてくる。 長い口吻けを漸く解かれて、一護は上気した顔と与えられる官能に勃ち上がった自身のものを自覚 しながら蠱惑的な笑みを向けた。 「…っとに…。お前…コレは上手いよな…」 乳白色の濁り湯に隠れて一護の官能の兆しはギンの眼に触れる事はなかったが、それでも一護 が感じているという事はその顔を見ただけでギンには明白だった。 本当に…このまま一護を犯したいと…そう思う。 我慢など、自分の柄ではない。そしてそれが…一護の副官の座を射止めるまでというのは、今の ギンにとって一日が千日に値するほどの長い月日には違いないのだ。 だが…。それでも意地はある。 ここで、誘われるままに一護を抱いてしまえば、きっと一護は自分を見限るだろうと、そうギンは思 っていた。 そしてきっと──。一護だとて、ここでギンが断固として断る事を望んでいたはずだ。 自分と一護の繋がりは、そこまで甘いものではない。 一護が本当に全てを自分に預ける事ができるまで──。 誰よりも深く、強い絆で結ばれるまで。 それまでは…多少の我慢も必要なのだ、きっと。 一護が──そう望んでいるのだから───。 「…なに言うてるん…。接吻だけやないで。ボクが副官になる前に我慢できんくなるんは…一護ちゃ んの方ちゃうの?」 揶揄うようにそう言うギンに、一護はギンの蒼い瞳を見つめたままうっとりと微笑む。 「…そうかもな…」 そのまま、ギンの細い身体にしなやかな腕を回して抱き寄せると、一護は、もっと…と強請るように ギンの唇を引き寄せた。 第五章 end ![]() ![]() |
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※話的には区切りがいいのでここまで。…ですがっ。なんかその先も書きたくなって(自爆) 余韻を残したい方はこれでストップ!んなもんより続き見せろ!という方はこちら→ たいした事はしてませんよ(笑) |
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