虚圏から帰ってきた直後のお話。
前半ギン、後半一護という感じです。


  刻の振り子 ── 第四章 番外 ギン ・ 一護 ──




ふわりと部屋へ侵入した気配に、机に向かって退屈そうに冊子をぱらぱらと捲っていたギンが振り向いた。
音もなくふわふわと漂う地獄蝶。
霊術院に今年入ったばかりのギンには本来無縁のものだが、ギンはそれが誰からのものであるのか知っていた。
死神の使う地獄蝶は黒揚羽だ。だが、それは透き通るような白い羽に本来紫の部分が淡い萱草色をした珍しい蝶だった。
すいっと人差し指を出すと地獄蝶はすっとギンの指に収まり、用件だけを伝えてその姿を消した。


「一護ちゃん!」
霊術院の寮を抜け出して待ち合わせの小高い丘に着くと、懐かしい姿が佇んでいた。
ギンをこの霊術院へと───、そしてひいては死神へと誘ったその人物。
護廷十三隊三番隊隊長、黒崎一護───。

ギンが流魂街からこの霊術院へと入学を果たし、漸く一護と同じ瀞霊廷に住まう事になった当初は今まで以上に一護に会う機会が増えるかも…と若干期待していたのだが。
さすがに隊長となると日々忙しいらしく、そして一護自身の用心深さもあってなのか、会う回数は流魂街に居た時よりも減っているような状況だった。
一護の厳命により、ギンも一護に繋がる様な言動はするなと再三注意された。
将来的に、一護の副官になる為、そして一護の野望に荷担する為にギンはここに居る。
だが、一護はあくまで自分がギンを引き入れるのではなく、ギン自身の実力で上まで上がってこいとそう言っていた。

「よお、ギン。元気か?」
「どないしたん?久しぶり……」
そう言ってギンは口を噤んだ。
表面はいつもと変わりなく見えるのに、なぜだか今日の一護はひどく儚い。
強くて優しくて──そして時として恐ろしいほど冷たい一護。
だが、今日の一護はまるで全ての力を失ったように脆く、儚かった。
「…どない…したん…?」
何かあったのかと問いかけるギンに、一護は自覚がないのか何の事かというように首を捻る。
「なにが?…ああ、久しぶりにお前がどうしてるか見にきた。どうだ?ちゃんとやってるか?」
いつものように…まるで保護者の様に、ギンの様子を尋ねる一護はちゃんと普段通りの一護で。
けれど、どんなに一護が普段通りに振る舞っていても、ギンにはそれが一護の真実か否かは嫌でも分かる。
一護との付き合いはまだわずか一年足らずだ。その間数える程しか会ってはいない。
それでも───、一護の事だけは見誤らない自信がなぜかギンにはあった。
「ボクの方は変わりないよ。相変わらずガッコはつまらんし、友達なんかおらへん。こんなトコさっさと抜け出して一護ちゃんの側居りたい言うのは変わらへんよ」
にっこり笑ってそう言うと、一護の顔が分かりやすいくらいに曇った。
「ったく…。いいか、何度も言うけど学校生活なんて人生の一時期しかねぇんだぞ?それくらい楽しんどけって何度も言ってるだろ。俺の事はいいからお前も同じくらいの年のダチ作っとけ」
毎回会う度に言われる台詞にギンは顔を顰める。
一護こそ何度言ったらわかるのだろう。同じくらいの年の奴らが本当に自分の話し相手になるとでも思っているのだろうか。

流魂街に居た時は自覚などまるでなかったが、この霊術院に入って漸くギンは自分が他とはどこか違うと言うことに気がついた。まず、理解が遅い。一度見ただけで覚えられるような事が何度も繰り返さなければ分からない。
たとえば、鬼道――。
最初から詠唱破棄で覚えたせいか、ギンは院に入ってから初めて鬼道には元々の文言がありギンの使う『詠唱破棄』という行為が鬼道を使う上での高等技術だという事を知った。
それぞれの名には意味があり、詠唱はその意味を指すもので、それを正しく理解していなければ思うように鬼道は打てない。ただ覚えればいいというものでもなく、それを自在に使いこなすにはそれに合った独特の霊圧の練り方というものがある。その理屈さえ覚えれば初等科で習う程度の鬼道ならばすぐにでも使えるようになるはずだった。
ギンは最初からその過程を飛ばして理屈よりも実践で覚えていたせいか、初めて受けた鬼道の授業でそれだけ理解してしまうと、わずか一月たらずで中級の鬼道までは粗方、詠唱破棄で撃てるようになっていた。
だが――。ふと周りをみると一月経っても二月経ってもだれもギンのペースに追いつかない。
院に入る前に既に始解まですませてしまったギンにとっては、授業で行う剣術など、ただの遊びの域にもならない。
ギンの居る学級は成績優秀者ばかりが集まる特進学級だ。そこですら学力はおろか、斬拳走鬼全てにおいてギンに適うどころか相手になる者は居ない。
その結果、だんだんと皆ギンを遠巻きにするようになっていく。
彼は自分達とは違うのだと、一線を引いて接するのだ。
そんな彼らの考えや行動がギンにとってはまた幼く映ってしまう。――呆れるほどに。
今の状況を思い浮かべ、ギンは子供らしからぬため息を吐いた。

「あんな、一護ちゃん…。ボク『天才』なんやて。知ってた?」
この霊術院に入ってから、事あるごとに言われた言葉。
今まで同年代と自分を比べるような環境にいなかったせいで自覚などまるでなかったし、大体初めてまともに対峙した死神が護廷の『戦神』とも呼ばれる一護で、しかもその彼に付き従う部下である藍染や東仙も隊長格に匹敵する程の力の持ち主で…。
そんな環境に突然放り込まれたギンにとっては、それが本来の『あるべき姿』でそれ以下などない。自分の力が遙か及ばない事に悔しい思いをしこそすれ、自分が特出しているなどという感覚など持ち合わせてはいなかったのだ。
だが…、『天才』かは兎も角、この霊術院に於いては、自分の能力が特出していると言う事だけはこの二ヶ月あまりでギンは嫌という程思い知っていた。
「ああ…知ってたぜ」
ギンの言葉に一瞬思案するような顔をした一護が、きっぱりとそう言う。
その言葉にギンは「そうなんや…」と肩を落とした。
「なんだ、何か言われたのか?」
心配そうに聞く一護にギンはゆるゆると首を振る。
「直接言われるんならええんやけどな…。まあ…言われた所でボクにはどうにもでけへんのやけど。なんかボクが出来るんにあいつらが出来ん言い訳みたいにされると面倒くさくてかなんわ…」
ぽつりと零すギンの頭をくしゃりと掻き回して一護が言う。
「――…仕方ないな…。どう見積もってもお前のレベルと院に入りたての子供とじゃあ開きがあり過ぎるしな…。まあ、持って生まれたものは変えようがない。諦めろ」
にやりと笑う一護に、ギンはぷっと頬を膨らませた。
「なんやの、それ。ちょっとは慰めるとかしてくれてもええやん」
拗ねたように言うギンに、一護は尚更カラカラと笑う。
「何を慰めろってんだよ。なんだ、平凡が羨ましいってのか?へえ、じゃあ今すぐここで叩き斬ってやろうか?」
笑いながら恐ろしい台詞を口に出す。
「お前が平凡なただのガキなら俺の部下になるには到底使えねえ。だったら今すぐお前は不要だ。お前の命は俺の好きにしていいんだよな、ギン?」
「一護…ちゃん…」
言葉と共に次第に不穏を滲ませる一護にギンが目を見開く。
「自分で環境変える努力もしねぇで、いつまでもガキみてぇな事言ってんな。周りがお前を避けるのはお前が避けてるからだろうが。俺から見りゃお前も、お前がバカにしてるガキ共と同レベルだ」
「――っ!あんなんと一緒にせんといて……っ!」
一護の言葉に思わず反論しかけたギンを、一護はきつい眼差しで見返してぴしゃりと言った。
「甘えた事言ってんじゃねえよ、ギン。俺がなんでお前をここまで連れてきたと思ってんだ?愚痴る前に何を為すべきかよく考えろ。今のお前に足りないのは死神としての知識ももちろんだが処世術だ」
「処世…術?」
「…そうだ。護廷の死神――特に隊長格に至ってはみな一筋縄でいくような奴らじゃない。
その中で、上に上がろうとしたらまず、大事なのは実力は然る事ながら一番重要なのは『信頼』だ」
「信頼……」
その信頼を、最終的に裏切る事になるであろう一護がそれを口にするのはどういう皮肉なのか。
信頼、友情、愛情―――。そんなものは何一つ信じていないと言いながら一護はギンに信頼される人物になれと言う。これが皮肉でなくてなんと言うのだろう。
「『あいつなら大丈夫』『あいつになら任せておいて心配はない』――人事なんてな、所詮そんな所から始まるんだよ。俺や…惚右介、要が何の為に動いてると思う?俺たちはいずれ護廷を潰す。
だがその為にはその中枢に入っていなければ意味がない。惚右介も要も、いずれ隊長格に上がってくる。その為にはまず、実力も然る事ながら、周りに警戒心を抱かせないだけの信頼がなければ成り立たない」
「それは…わかるけど…」
「護廷はな、お前が考えているほど甘い所じゃない。ただ外面さえ良くしてれば通るなんて思ってるなら大間違いだ。ギン――お前は馴れ合いと信用が同一だとでも思ってんのか?」
「――――!」
「お前の実力は俺が認めてる。今お前の周りにいる子供とお前じゃあ話にならない事もよく分かる。おそらく知識さえ身に付けば現行の席官ですら軽く凌駕するだろう。
だがな、たかが霊術院のガキくらい思うように動かせない奴に俺の副官を預ける気はねえぞ」
「一護…ちゃん…」
「学校なんてな、色んな奴の集まりだ。それこそお前と同様に流魂街で毎日死ぬような目にあってきた奴もいれば、苦労しらずの貴族のボンボンもいる。それぞれに考えも違う奴らの集団なんだ。自分と違う環境で育った奴が、何を見て何を考えて行動するのか、今のうちによく見極めとけ。元々お前は洞察力は高ぇんだ。」
「…うん…」
「ギン…お前のように天才肌の奴はたとえ何処に行っても同じ目にあう。お前が周りの奴を理解できないように、向こうもお前の事は理解できない。理解できないから怖いし自然と遠巻きになる。
それは…恐らく護廷に入っても変わらないだろう。無理に他人に合わせる必要はない。だが、必要以上に離れる事はするな。早く自分の身に合う場所に来てえんなら、人間関係くらい卒なくこなせ。
ガキ扱いして欲しくねえんなら、俺にこんな事言わせるな」
「ん……」
一護の言葉にギンは静かに頷く。確かに一護の言うようにギンにとって他人と関わる事ほど面倒なものはない。
だが、そう言って面倒を避けつづけるギンを一護は子供の甘えだとばっさり切り捨てる。
「…ごめん、一護ちゃん…。ボク甘えとった…」
俯いていた顔を上げて前を見据えたギンがぽつりと零した。
「流魂街出て…ガッコ入って…。毎日が殺し合いやった所からいきなり寝る場所もメシも困らんような生活になって…、それでも入った当初は結構ピリピリしててんけど、この生活に慣れるに連れてどっか気ぃ抜けてもうたみたいや。正直、温い場所やなぁって思てた。でも…せやね。早ぅ一護ちゃんの側行く為には気ぃ抜いとる暇なんかあれへんもんな。ほんまごめん、一護ちゃん…」
そう言ってしょげた様に肩を落とすギンにようやく一護は表情を緩めると、慰めるようにポンポンとギンの頭を軽く叩いた。

「…いいさ。まあ、色々言ったけど、学校生活楽しんどけって言ったのも本音だぜ?お前にとっては温くて物足りない場所には違いないだろうけど、その温さを満喫できるのは今のうちだけだ。いずれ嫌でも血なまぐさい場所に立つ事になるんだ。…お前の才能が非凡だってのは俺が一番よく知ってる。その分、他の奴らよりも周囲との軋轢が高い事もな。でもそんなの今に始まった事じゃねぇだろ。単に殺し合うか否かの差でしかない。今更そんな事でぐだぐだ悩むな」
「別に悩んでへん!それに…一護ちゃんがどう言おうとボクはこんなトコ長居する気はないんや。周りと上手くやれ言うんならそれくらいやったる。せやけどボクはこんな所からさっさ出て、早よ一護ちゃんの側行きたいんや!ボクが今ここ居るんはその為だけや!」
噛み付くように言うギンの言葉に一護はやれやれと言うように笑う。
「…ったく。だったら早くやることやって上がってこい。お前は…俺の副官になるんだろ?」
「そうや」
きっぱりというギンに一護の顔に微笑みが乗る。
だが…それは、嬉しそうというよりも…なぜかどこか儚く、悲しげだった。
「一護ちゃん…?」
「ギン…」
どこか憂いを含んだ一護の表情が僅かに苦しげに歪む。先程ギンの頭に置かれた一護の細い手がするりとすべりギンのまだ幼さの残る手を取りそっと握り込む。

「お前は…本当に、いいのか――?」

握り締めたギンの手を見ながら一護がぽつりと呟いた。
それは、ギンに対する問いかけというよりも、一護自身に対する問いかけのようで――。その様子にギンは一護を凝視する。
「なにが……」
思わずこくりと喉が鳴った。やはり、今日の一護はどこかおかしい。
普段なら、一護はギンにこんな問いかけなど決してしない。この尸魂界を裏切るという事が、どれほど困難な事かは一護は身に染みて知っている。それに半ば荷担したギンに今更身の振り方を問いかけるなど、何の意味もない事は一護が一番よくわかっているはずだ。
もしここでギンが否と言えば、その場で一護はギンを斬るしかなくなる。
本当にギンが一護を裏切る気があるのなら尚更、今この場でそんな事は言えないはずだ。
それが一護にわからないなどとは思えない。
それでも――敢えてそれを聞く一護にギンは戸惑い――何かを感じ取ったように力強く頷いた。

「ええよ」
迷いもなく答えるギンに、一瞬一護の瞳が揺れる。
一護の……まだ自分よりも大きな手――。
ギンはその一護の手をしっかりと握り返して、揺れる一護の瞳をじっと見返した。
「ボクに…後悔してへんかって聞くのん?そんなんしてへんよ。ボクはな、一護ちゃんが好きや。一護ちゃん以外に大事なものなんかボクにはあらへん。――なあ、一護ちゃん…、聞いてもええ…?」
「…なんだ…?」
「なんで、ボクを副官に選らんだん?…もしそうしよう思たんなら藍染さんかて良かったたはずやろ?ずっと一護ちゃんの側おったんやし…。それに今は違うけど、自隊の三席やったやん。しよう思たならいつでもできた筈や。……要ちゃんかて、一護ちゃんへの忠誠心ものすご強いやん。まあ…あの人らは隊長格になる資質持ってはるから、そっちの方優先したんかも知れんけど……。でも、ボクはまだ一護ちゃんから…今の護廷からみたらまだひよっこにも及ばんレベルや。それなのに、ただの流魂街のガキに、なんで一護ちゃんの副官まかせよう思うてくれはったん?」
ギンの問いかけ――。今までそんな事を口に出した事はないが、思えば当然の疑問だったのかも知れない。
ギンが言うように、一護の副官になりたい死神など五万といる。
その中でも一護自身の部下である藍染と東仙の二人…特に一護の隊で三席にまで上り詰めた藍染は、殊更その思いが強かった筈だ。
いくら才能が特出しているとは言っても、ギンはまだ死神ですらない。そのギンに自身の背を預ける気になったのはなぜなのか。ギンのように口には出さずとも、藍染も東仙も同じように思っているのは明白だ。なぜなら、それは単に三番隊の副隊長という以上の意味を持つのだと彼らはよくわかっているからだ。
「なんで、……か」
長い沈黙の後、一護はぽつりと言葉を落とし再び黙り込む。
手の中にあるギンのまだ子供のような手をじっと見つめ、するりと離すと一護はそのままゆるやかな斜面へと歩を進めた。しんと静まりかえった場所に、通り抜ける風が下生えを揺らすさわさわとした音だけがわずかに響く。
院近くの、瀞霊廷の外れのこの場所に広がる眼下は、護廷の明かりすら遙か遠く一面の闇に包まれている。
ギンに背を向けたままその闇を見下ろす一護の背中を、ギンはただ静かに見つめていた。


先ほどぽつりと呟いたきり、一護は口を開こうとしない。ギンが問いかけた疑問は宙に浮いたまま静かに時が流れる。だが、ギンは一護に答えを急かすような事はしなかった。
一護が答えても答えなくても…正直どちらでもいい。
確かに一度聞いてみたいとは思ってはいたが、一護がどう答えたところでギンの気持ちが変わる訳ではない。
あの背中を、守りたいと思う。
誰よりも強い一護―――。
その一護の背を守る権利があるのは自分だけなのだという、確信めいた強い思い―――。
それが何故かはわからないが、ギンは一護もそれを望んでいるように思うのだ。

「―――ギン」
ふと、静寂の闇の中に一護の静かな声が響いた。
このまま何も言わずに立ち去りそうな雰囲気すらあった一護から名を呼ばれて、浮遊する思いに身を任せていたギンが現実に戻る。凛とした一護の声に、ギンは一護から発せられる言葉を一つも聞き逃さないように、じっとその背を見つめた。
と、次の瞬間一護はまるで思いもかけない台詞を吐いた。
「お前――隊長になるか―――?」
「え……?」
想像すらしていなかった言葉に、思わずギンが目を見開く。
自分に隊長としての資質があるとかないとか…そんな事はどうでもいい。
ギンの目標はただひとつ、一護の副官になる事だけだ。そんな事くらい一護にも十二分にわかっているだろうに。
「…どういう…コト……?」
混乱した頭のまま震える声で漸くその言葉だけ絞り出したギンに、一護が静かに振り向いた。
そして動揺するギンの瞳を真っ直ぐに見つめながら一護が口を開いた。
「……さっきも言った通りお前は非凡だ、ギン。今はまだ知識も実力も足りないが、恐らくあと数ヶ月もしない内にこの霊術院では生徒はおろか教員すらもお前に適う者は居なくなるだろう。なぜなら、お前の持つ霊圧は隊長格と同等のものだからだ」
静かに語られる一護の言葉に、ギンは口を引き結んだままじっと一護を見つめ続ける。
だから、それが一体何だというのかと、叫び出しそうな衝動を必死で抑えつける。
望んで持てるものでもない隊長格としての資質。
だが、今それを一護に言われたところで嬉しくも何ともない。
「俺はお前に俺の副官になるかと聞いた。――お前はそれに是と答えた。でも…もしお前が望むのなら、お前は隊長になる事も可能だ。ギン、お前には十分その資質がある。お前がそうしたいってんなら、俺もそのつもりで動く」
「……そんなコト……何の意味があるん…」
一護の言葉に、ギリっと奥歯を噛みしめながら絞り出すようにギンが言う。
いずれこの護廷を――尸魂界を裏切る自分達にとって、この護廷での地位など計画の一端としての価値しかありはしない。そんなものを、本当にこの自分が望むとでも思っているのだろうか。
そんなギンの憤りを無視するかの如く、一護がふっと微笑んだ。
「意味か…。意味ならある。お前が言ったように惚右介を五番隊に移したのはいずれあいつを隊長にする為だ。あいつがどう思ってたかは知らねえが、俺は元々そのつもりだった。…要も、今はまだ単なる席官に過ぎないが、いずれは隊長格にまで上がってこいと言ってある。そうなると俺を含め護廷の隊長格は三人。もしお前を含めるとしたら四人だ。それだけの人数が一気に抜ければ護廷の中枢はガタガタになる。それだけでも――十分意味はあるだろう?」
「やから……っ!ボクが言いたいんはそんな事やない!『ボク』にとって隊長いう肩書きに何の意味があるのか聞いてんのやっ!」
淡々と話す一護に、ギンが癇癪を起こしたように言葉を投げつける。
「一護ちゃんの言うように中枢に食い込んでるもんが多いほどええ言うんは、一々言われんでもわかっとる!…やから…、もしそれが一護ちゃんの命令でそうしろ言うんならボクかて考えるわ!考えてもたぶん『嫌や』言うやろうけどなっ!」
「……ギン……」
たった今、堂々と命令に背くと宣言するギンに、一護は怒る気も失せたのか呆れたようにため息を吐く。
一護に対するギンのこの畏れ知らずの物怖じのなさは、いっそ清々しい。
今この場にあの二人が居たなら、藍染は眉を顰めて説教モードに入っただろうし、東仙に至っては即座に斬りつけていたかも知れない。
「最初にボクを副官にする言うたんは一護ちゃんや。今更それを覆す言うんなら、今すぐここでボクんこと斬ったって。ボクにその資格がない言うんならともかく、それ以外の理由なんて絶対に聞く気なんかあらへん!」
「ギン―――」
ギンの強い言葉に、一瞬――。ほんの一瞬だけ、一護の顔が幼い子供のようになった。
まるで捨てられた子供のような頼りなげな表情。
だがそれは、ギンの瞳が瞬く間に既にいつもの――主としての一護の顔に変わる。
どこかが、何かがおかしかった。
ギンの頭に警鐘が鳴る。
こんな風に、たとえほんの一瞬でも、一護が自分の『本当の』感情を顕わにすることなど決してありえない。
一護を守る堅い殻の様なものが崩れているのがわかる。
そして…たった一瞬で、見えてしまった。
何者にも崩せない強固な殻に包まれたその内にある、幼い――子供のように無垢な一護。
そうだ、と―――。この瞬間ギンは理解する。
自分が護ろうとしていたのは、この姿なのだと―――。
決して誰も――一護自身ですら知る事のない、その姿なのだと――。


「一護ちゃん……」
ふうっと、力を抜くようにギンが肩で大きく息を吐く。
そして、一護の側まで歩み寄ると、一護の袖をぐいと引いた。
「ギン?」
「座って?」
不思議そうにギンを見下ろす一護にそう言うと、ギンは早くと言うようにまた軽く袖を引く。
何がしたいのか分からなかったが、ギンの事だ。どうせ思い通りになるまで退きはしない。
やれやれと、一護は仕方なくその場に腰を下ろした。
「ほら、座ったぜ?これでいいか…って、おい!ギン!」
そのまま背後からぎゅっと抱きしめられて、一護は思わずギンを振りかぶる。
「ちょっと、じっとしとって」
子供から子供のように叱られた――。その事実に一護は抱きしめるギンの腕を振りほどく事も、怒ることも呆れることもせず、ただ瞳を瞬かせる。
そして、しばらく固まっていた一護は、ようやく諦めたように力を抜いた。

ちょっとでも不埒な真似をしようものなら即刻振り払ってやろうと思っていたのだが、ギンはそのまま動く事も話すこともせずにただじっと一護を抱きしめていた。
「ギン…重い…」
しばらくギンのしたいようにさせていた一護が、背中から圧し掛かるように抱きしめるギンにぼそりと文句を言う。
「重ない。そんなに体重かけてへんやろ?」
「張り付くなって言ってんだよ。おんぶお化けか、お前は」
「……何それ」
「…人の背中に張り付く化物だよ。…だんだん重くなるんだ」
「……一護ちゃん…、何の話してんの……?」
一護に張り付いたままギンが首を傾げる。
「現世の妖怪でいるんだってさ、そんなのが」
「妖怪って……。まぁええけど…、ボクをそんなんと一緒にせんといてや」
呆れたように言うギンに、一護はくすくすと笑う。
そして一護の肩に沈められたギンの頭をぽかりと叩く。
「だから、いいかげん離れろって。―――ギン」
咎めるように言う一護の言葉を物ともせずに、相変わらず飄々とギンが答える。
「いやや」
そう言って一護の前に回した腕に益々力を込めた。
「――ったく…。んなに言うこと聞かない部下は初めてだ……」
「何でもハイハイ言うて言う事聞く奴なんて、面白んないやろ」
一護の言葉にギンがしれっと返す。
確かに、東仙なら最初からこんな事はしないだろうし、藍染なら一護の気分を察して一護の望む事を先回りする。
唯一、好き勝手にしているのは白だが、あれは部下ではなく一護の片割れだ。
ギンも決して鈍い訳ではない。それどころか恐ろしく鋭い。けれど、一度自分がこうすると決めた事に関しては、一護が何を言おうと聞く耳さえ持たない所がある。よく藍染から一護はギンに甘いと言われるが、これは甘いのではなく、ギンの言っても聞かない強情さに一護自身諦めが入っているだけだと思う。
尤も、命令に背くのであればその限りではないが、要領が良いと言うか…大体に於いて、ギンの我侭は本筋にはおよそ関係のない些細な事だけなのだ。
唯一…副官の件に関してだけは、何を言おうと譲る気はないらしいと、先ほどの剣幕を思い出す。

一護がギンに隊長の話をしたのはギンの才能もさることながら、そこに一護の迷いがあったからだ。
初めて会った時から、ギンが隊長格としての霊圧と才能を持っている事を一護は見抜いていた。
だが…、ギンに誘いをかけた時将来の隊長としてではなく、自分の副官としてと言ったのは、何も計画の為ではなく単純に自分の我侭だ。
藍染の抜けた今、一護自身が動きやすいように自隊に腹心の部下が居るというのは何かと楽だ。
だが、それはあくまで楽だというだけの事であって、居なければ困るというほどでもない。
確かに、以前に比べて行動は制限されるだろうが、長期間隊を空けるのでなければ上手く立ち回るのはそれ程難しい事ではない。だから…本当に計画の為を思えば、ギンを隊長に付けた方が遙かに実はあるのだ。

けれど……。
なぜあの時、自分はギンに対して副官になれなどとと言ったのか。
正直一護には、今でもそれがわからない。理屈と自分の行動がずれる事など初めてだ。
そして、それに戸惑う自分が居る。
一護自身、誰かに背を預ける事など考えた事はない。藍染はよく一護を守ると言うが、それは藍染の望みであって一護の望みではない。ただ、それに対して異を唱えないのはそれが藍染の希望となる事をわかっているからだ。
狡いと、そう思う。愛してもいない男の愛を利用し、意のままに動かす。
ただ――自分の目的の為に。

「何…考えてはるん?」
黙り込んだ一護にギンが気遣うように声をかける。
その声を聞きながら、やっぱりこいつは聡いな…と一護は思う。
我侭で強情で、時には傍若無人で人の言うことなど何処吹く風のギンだが、何も言わなくても誰よりも敏感に一護の様子を察知する。まだ子供のくせにそういう時のギンはひどく大人だ。
「別に…たいした事じゃねえよ…。それよりも、さっさと離れろ」
「いやや」
咎めるように言う一護に即座にギンの返事が返る。
「んとに…俺はお前の母親か。いつまでも甘えてんじゃねぇよ……」
自分で振り切るのは容易いが、なぜかそうせずに一護は呆れたように零す。
「甘えてなんておらへん。甘えさせてんねや。一護ちゃんのこと」」
「ガキが生意気言ってんじゃねぇよ」
後ろに回した手でボカリとギンの頭を叩く。だが、それすらも応えない様子でギンは一護を抱きしめる腕にますます力を込めた。

「あんな…、一護ちゃん…。ボクは何があっても一護ちゃんの部下や」
「ギン…?」
一護の肩に額を押しつけてゆっくりと静かに――それでいてきっぱりとした口調でギンが言う。
「一護ちゃんがなんでボクん事副官にしよ思うてくれたんかさっき聞いたけど…ホンマはそんな事どうでもええねん。ボクにはな、それがもの凄ぅ嬉しかった。一護ちゃんは人に背中預けるようなお人やない…、そんな事ようせん事くらいボクにもちゃぁんと分かってるよ。せやから、これはボクの勝手な思いや」
「―――ギン……」
「ボクが死神になるんは、一護ちゃんの側に居りたいからや。ボクはまだガキで、何の力もあれへん。でも、ボクに才能がある言うんなら、ボクはそれ全部を使うてでも必ず一護ちゃんの隣に行く。一護ちゃんに降りかかる火の粉は、一護ちゃんに届く前に全部ボクが叩き斬ったる。一護ちゃんにはな、絶対にボクが必要や。藍染さんでも、要ちゃんでもない。ボクが一護ちゃんの副官や。護廷離れてもそれは変わらへん」
ギンの思いに身を預けながら一護は何もない虚空を見つめる。
いずれ自分達を待つのは明るい光などではない。
そこから最も遠い、漆黒の闇だ。月も星もなく、日の光が差すことすらない暗黒の世界だ。
その世界で……輝く月のようなギンの髪は酷く映える事だろう。いずれ成長した一人の男となったこの子供は、今よりも遙かに深い闇を纏い、氷のような微笑みを浮かべて幾多の血を浴び続けているだろう。ただ──一護の為だけに。
ギンに初めて会った日。まだ見ぬ未来が一護の視界に映り込んだ。
一護を守るように背後に立つ長身の男。いついかなる時も、常に一護を守る為だけにあるその腕。
体温すら感じさせないような冷たいその腕に、当然のように身を委ねて安堵する自分。

それが本当に起こる未来なのか、自身の願望なのかは一護にはわからない。

「――冷たい……お前の腕……」
ギンに身体を預けて一護が呟く。
「…そう?ボクからしたら一護ちゃんの身体が熱いんや…」
するりと一護の頬に手を滑らせてギンが呟く。頬にあたる冷たさが気持ちいい。
その冷たさに一護はうっとりと目を閉じて自分に触れる体温の心地良さに酔う。
「……一護ちゃん……」
まだ完全に男の声に成り切っていない声。その声に惹かれるように一護はゆっくりと頤を上げる。
ギンの指が頬を滑り細い指で一護の顎を支え持つ。
ゆっくりと近づくギンの顔を見上げ、一護はゆっくりと目を閉じる。
「………ギン………」
吐息の様に囁くその名を言い終えないうちに二人の唇が重なった。

薄く開いた一護の唇に、ギンの舌がするりと潜り込む。
そのまま舌を絡め取られ、あやすように口腔内を舐められ、舌を吸われる。
「…ん…」
最初はされるがままだった一護が自らギンの舌に自分のものを絡めた時点で、ギンの動きが激しく貪るような口付けに変わる。
まだ子供のくせに、経験だけは数多くこなしてきたギンの口付けは、一護からしてみても、かなり巧みで気持ちいい。
注がれる唾液をこくりと飲み込み何度も角度を変えて漸く離されると、今度はその濡れた唇に舌を這わせてくる。
「ん…ふ……」
一護の吐息が甘くなるのを見計らって、ギンの唇が頬から首筋に滑り落ちた時、一護の指先がギンの耳朶に触れた。
「…一護ちゃん…」
「…ギン…」
それが了承の合図だと、そう思い、ギンは再び吐息と共に首筋に口付けを落とす。──と。
「…アタァ──ッ!」
グンっと思い切り耳たぶを引っ張られて、ギンが悲鳴を上げた。
「なにすんのんっ!い、痛っ、イタイってっ、一護ちゃんっっっ!!」
「ガキが色付いてんじゃねぇ。ったく、百年早ぇ。あいにく、俺はガキと寝る趣味はねぇよ」
「やって一護ちゃんかて……ゎあああーーッ!イタッ!引っ張らんといてーーーッ!」
しんと静まりかえった辺りにギンの絶叫が響き渡る。
グイグイと容赦なく引っ張り、それでも尚一護の隊長羽織にしがみついていたギンの手が漸く離れる所まで引き摺ると、一護は何の前触れもなくパッと手を離した。
「ギャ!?」
思わずつんのめりそうになった身体を咄嗟の判断で立て直すと、ギンがゼイゼイと息を吐く。
それを面白そうな目で見ていた一護は、これで気が済んだというように、「よっ」と短く掛け声をかけて立ち上がった。
「さて、と。お前の顔も見たことだし、帰るか」
んーと軽く伸びをして、ニッコリと笑う。
その顔には、初め見た時の儚さも脆さも欠片もなく、一護の中の鬱積していた何かが昇華されたようなすっきりとした笑顔で。ギンは思わず今し方された仕打ちも忘れて、その顔に見惚れてしまった。

そして──ふと、先程感じた感覚のままを口に出す。
「…なあ…一護ちゃん…。いったい今まで何処行っておったん…?」
「え…」
ギンの問いかけに、じっとその顔を凝視する。
この何日か虚圏に行っていた事はギンには伝えていない。
尸魂界に帰ってきてすぐ、なぜか無性にギンの様子が気になって…いや、正直に言うとその顔を見たいと思って…その足で呼び出したのだが、そんな事はギンは知らない筈だ。
ただのカンだとしたら、超人的な野生のカンだなと思いながら一護が聞き返した。
「…なんで?」
「………言うてもええの……?」
僅かに口ごもるギンに、何だと首を傾げる。
無言で先を促すと、ギンは若干言いにくそうに、ぼそりと呟くように言った。
「…虚っぽいで…一護ちゃん…」
「──え……」

一護の中に居るもう一人の一護。虚の性質を持つ、残虐極まりない一護の忌むべき力──。
虚圏に居る時だけそれは一護と分離し実体化できるが、尸魂界に戻ってくればそれは元通り一護の中に封印される。あの瘴気のような濃い霊圧濃度無くしては実体化も、虚の欠片すら表に出られない彼──白。
その事はまだ、この子供には何も語ってはいない筈なのに。
「虚っぽい…?俺が…?」
まさかと思いながらもう一度聞き返すと、ギンは何かを思案するようにきゅっと唇を引き結んだ。
「ん…。今は別になんとも思わへんけど…。さっきキスして…触れた時に…なんとなく」
「なんとなく、何だよ」
「…そう言われても、よう分からへんよ。口で説明なんかようできんし…。でも、ソレ・・、ボクん事思いっきし拒否してるやろ」
知るはずのない一護の中身と、虚圏での白との会話まで正確に捉えたような台詞。

──なんも知らねぇくせに、きっぱり断言しやがったよコイツ……。

ギンのカンの鋭さに舌を巻く思いで、一護は目を眇める。
一護の内で、白が目覚めた気配は、ない。
再び幾重にも封印された深い澱みの中で、彼は今眠っている。
自分の裡を探り、それを確信する。
恐らく一護自身の霊圧で感じた訳ではない。白が触れた霊圧の感触がこの身体に残っている訳でもない。
実際それを口に出したギン自身も、よく分かってはいないらしい。
ただのカンか──。そう思い、それに安堵するのと同時に、ギンの鋭さに一種の怖さを感じる。

まだ、一護の中身の事も、背景も、ギンに話すのは早いと思っていた。
もちろん、具体的な計画の事も、全て語っている訳ではない。
将来必ず、彼は一護の側に立つ。
その確信だけは揺るがないのに、それすらも自分で信じ切る事ができない。
不要になれば、いつでも斬って捨てる───。
まだ、霊術院に入ったばかりの子供。
どれ程の才能があったとしても、彼が死神として他を凌駕するほどまでに育つかは、これからの彼次第だ。
そして、それが見込み違いだと一護が思ったならば……。
いつでもこの子供を斬る──。そういう位置に自分はまだこの子を置いている。
たとえ今、一護に心酔していたとしても、明日は分からない。子供とは…そういうものだ。
だからこそ、全てを明かすのはまだ先だと…いつでも捨てられるような存在なのだと…。
そう決めているのに。


「ばーか。ソレは俺が拒否してんだよ」
核心を突くギンの言葉を、先程の口付けの行為にすり替えて、一護は軽口を叩く。
それにギンは、幾分口を尖らせた後、ヤレヤレというように肩を竦めた。
「ま、ええわ。そういう事にしといたる」
暗にこれ以上踏み込むなというような一護の言葉の含みを汲み取ったのか、やはりどこまでも聡いギンはまるで大人のような口を利いて一護を見上げた。
全て分かっているというような顔をして。

言葉の裏で交わされる無言の遣り取り。
互いにそれを承知していながら、ギンも、一護もそれを知らぬ振りをする。
そして、表面の言葉尻だけを捉えたような言葉の応酬が始まる。
「ああ!?なんだ、それ。つーか、そんな下らねぇ事言ってる暇あるんなら、勉強しろ、勉強!」
「…自分が呼び出しといて何言うてんの…。まったく…子供なんやから…」
「煩いわ。んな事言うなら金輪際会いにこねぇからな」
また子供に子供と言われたと、若干ショックを受けた一護は売り言葉までもが子供じみてくる。
「そんな事言うても、一護ちゃん絶対会いにくるし」
「いや、もう来ねぇ。じゃあな」
「じゃあな言うても帰らへんやん」
静まりかえった闇夜に響く、子供と少年の罵り合い。
それをどこか醒めた自分が見下ろしながら、ああ…楽しいってこういう事かも知れないと思う。

そして──。
その片隅で、一護は、自分の中に祈るような声を聞く。

それは小さくて、細い……。けれども強い祈り。
一護の…悲しい願い。
無くした筈の、心の叫び。
それを振り切るように、一護は目の前の子供との口遊びに興じる。

それには敢えて──耳を塞いで。




まだ…。まだ、暴くな、ギン──。


お前の力が、本当に俺にとって必要なんだと…俺の全てが確信するまで。
お前が、本当に俺の隣に立つまで。

俺を侵すな。俺の中に入るな。俺を──乱すな。
そして、俺に思い起こさせるな。
バラバラに砕け散った俺の心がこの中にある事を。
俺の中に芽吹いた感情がある事を。


ギン───。
俺が拾った可愛い子供。
まだ、早い。
まだ………。

俺がお前を怖がるのは…… 
全てを暴かれる恐怖に怯えるのは……



もっと…先でいさせてくれ………





end

   


※それぞれの思いという事で。
一護自覚があるんだか無いんだか…って感じですが、
一護にとっては今まで全てが理性と計算で動いているようなもんなので。
今までの自分を覆すようなギンの存在は一護にとっては、愛しくてでも怖い存在なんだろうなと。
ああ、でもやっぱ仔ギンは楽しいv 今回ちゅーさせましたけど、ちゅーだけですよ!
ふふふ。仔ギン、せいぜい我慢して悶えるがイイっ!