※与太話2。前回にも増して、内容なんてありません。
単なるエロ。
後にも先にもそれしかございません。


刻の振り子 ── 閑話休題 2 ──  




「ふ……、ん………」
秘めやかな吐息が一護の口から漏れる。

一組の布団だけが敷かれた、殺風景な部屋。
その布団ですらも、掛け布団は遠くに放り投げられ、善がる一護の身体は逃げ出すように、敷かれた布団から大きくはみ出していた。


一護の身体の隅々まで、余すところなくギンの指が、唇が這う。愛しいと口に出して告げる代わりに、深く執拗になる愛撫。
敏感な一護の身体は、ギンが触れる度にビクビクと反応を返し、その度に甘い喘ぎを落とした。
そんな一護の仕草が、ギンには可愛くて仕方ない。
ゆっくりと時間をかけて下肢までたどり着き、すでにとろりとした蜜を零している屹立にようやくギンは手を伸ばした。
「───ッ…ぅ……」
ビクンと、一際大きく腰が跳ねる。さんざん焦らされた一護の身体は、敏感を通り越してわずかな刺激すら、強烈な快感となって襲ってくる。
生理的な涙が一護の瞳に膜を張り、視界がぼやけた。
今にも零れ落ちそうな涙を湛えた瞳で、下腹辺りにあるギンの頭に視線を向けると、一護の視線を感じたのか、ギンがふっと顔を上げた。
「………なに……?どないした……?」
横に長い唇の端を上げて、ギンがいつも以上に瞳を細める。
まったく、どこで覚えたのか。こういう場面では子供だとナメていたらとんでもない事になる。
「……バカ……。触んな………っ」
くっと唇を噛みしめて絞り出すように言った一護に、ギンはクスっと笑った。
「触らんでええの…?一護ちゃんのココ…、さっきから触れて欲しい言うてるで……?」
「……だから………っ」
そんなの。触って欲しいに決まっている。触れて、扱いて、思いっきりイかせて欲しい。
でも、感覚が鋭敏すぎて、それすらも辛いのだ。今触れられれば、きっと狂ったように乱れてしまう。

なぜ自分を抱く男たちは皆、いつもしつこいくらいのねっとりとした愛撫を好むのか。もっとサラッと犯れば一護だって楽なのに。
全ての男たちへの文句を、今目の前のギンに思いっきりぶつけて、一護はむぅっと眉を寄せた。
「……辛い?」
わかっているくせに、そう聞いてくるギンに一護は素直に頷いた。
「まったく……。そんな涙目で、訴えるような視線向けんといて…。ボクの理性かて持たへんわ……」
「……なに言って………ヒァッ……!?」
今のお前に理性なんてあんのかよ!?と、文句を言おうとした一護より一足早く、ギンは一護の先端をぱくりと口に含んだ。
たまらずに声が上がる。
そこから先は、もう止まらなかった。
「…や……あああ……っ!……ひ……ぁ…っ、あ・ア、ン……アッ…!」
ビクビクと身体をのけぞらせ一護が喘ぐ。舌で、口腔で舐め回される屹立が気持ちよくて、一護は強請るように自分からも腰を回した。
「ふ……、イ……ギン……っ」
「…ええの…?」
舌と唇で竿をなぞりながら、ずるりと一旦一護を吐き出したギンは、ピチャリと、音を立てて先端から滲みでる蜜を啜る。
キュッと上に上がった双玉も片手で揉み込みながら、浮き出た血管を辿るように指を這わせていく。
たまらない刺激に、一護はコクコクと何度も首を縦に振った。
「ん……イイ……。イ……もっと……ギン………あ………」

一応。二人の中では、『今』寝る事は禁忌としていたはずだった。
子供のギンと寝る事自体がモラルに欠けるとか、そんなお綺麗な理由などではなく、それは、もっと根源的な『禁忌』だった。
『一護の副官になるまでは一護とは寝ない』と、頑なにギンが拒んだ時、その理由を聞かずとも一護自身もそうするべきだろうと思っていた。
互いが互いで有り続けるために。本当に身も心も、安心してこの男に委ねられる時がくるまでは。
その時を、誰から言われるまでもなく、二人共知っていた。
だから、その前に溺れたくはない。
溺れればきっと、それ以外にはいらなくなる。そしてそれは……一護を根源から崩してしまう事になりかねなかった。

「あ……ギン………。や……も……、イ…ク……ッ」
ギンの口の中で、一護が跳ねる。
ビクビクと生きの良い魚のように、解放を待ちわびる一護のものは、その言葉を合図にギンが鬼頭にカリッと軽く歯を立てた瞬間、ドクっと甘い蜜を吐き出した。
それを残らず嚥下して、顔を上げたギンの視界に、顔をまっかに染めて恍惚の表情を浮かべた一護が映り込んだ。
ハァハァと荒い呼吸を繰り返して、肩で喘ぐ一護のこの瞬間は何にも増して美しい。
とろんとした瞳は薄いベールが掛かったかのようで、いつもの怖いくらいに澄んだ琥珀が妖しい滑りを帯びる。
薄く開いた唇から漏れる甘い息。桜色に上気した肌は、絖のような光沢を放ち、しっとりと吸い付いてくる。
その全てが官能的で、視覚で、聴覚で、触覚で、男の官能を直接的に揺さぶり落とす。
だがそれ以上に、快感を全身に纏わせて揺蕩う一護の姿を、自分以外の男が目にしている事も知っていた。

───ここで寸止めって、ホンマ地獄やわ……。

自分で決めた事なのに、一瞬、それすらもどうでもよくなってしまう。
このまま一護と墜ちるなら、それも甘美な地獄だろうとすら思う。
そんなギンの必死な格闘を余所に、一護はこくりと唾を飲み込むと、ようやく整った息でギンの名を呼んだ。
「………ギン……」
甘く、誘う声。
「……なに……?」
それに些か嫌な予感がして、ギンが応えると、一護はするりとギンに手を伸ばした。
「………欲しい……」

まだ力の入らない腕で、ゆっくりとギンの銀糸を梳く。
強請るように甘えてくる一護を振り切るには、ギンがこれまでしてきた我慢を総動員してもかなり根性のいるものだった。
「……アカン…て」
正直、ここまできて、駄目も何もないもんだと自身の裡が囁く。
一護に触れてから、それは何度となく聞いたギンの欲望の声だった。
本当の事をいえば、幾度かそれに流されそうになった事もある。それでも、ギンはそれを鎮めるように、ギリっと唇を噛んで言った。
「駄目、や……。我が儘言わんと…一護ちゃん……」
「……やだ……」

やだ、って────。
あんたは、鬼か!!!

なぜそこで、可愛くなる!?

一護の言葉と仕草に、思わずギンは目眩を起こしそうになった。
子供みたいな頼りなげな瞳で、ギンを見上げてくる。欲しくて欲しくて仕方が無いというような切羽詰まった顔。
見れば、一護のものはまたもや可愛く勃ちあがり、とろとろと蜜を零していた。
隠れた蕾も、妖しげに収縮し、ギンを誘っている。
その中に、自身を埋め込んだらどれほど気持ちいいのか。
一護の身体の全てを知らなくても、それは容易に想像はついた。

「いいから……。早くきて……ギン……。俺のナカに……挿れて……」
ギンのうなじにするりと手を這わせて、一護がギンを引き寄せる。
それに素直に従いながら、ギンは、一護と唇を合わせるギリギリの所でゆるく首を振った。
「そないにボクが欲しいん……?」
そう聞き返すと、一護は躊躇無く「うん」と頷いた。
その答えに、ギンは少しだけ冷静を取り戻す事ができた。
「……ちゃうやろ…?挿れてもらえるんなら、今誰やってええん違う…?」
「…そんなの……」
ギンの言葉に、一瞬詰まった一護が、ふいっと一護の瞳をまっすぐに見つめるギンから視線を逸らした。
鉄壁のポーカーフェイスの一護だが、さすがに達した後の思考がままならないうちに核心を突かれると痛いらしい。
目を逸らしたのはその表れだ。
一護もわかっている。今そうするべきではない事は。
それでも身体の欲望の方が辛いのだろう。

「ここ……疼いてたまらんねや……」
するりと、ギンの指が一護の股間を滑り、ひっそりと息づく蕾に這わされる。
それに、ヒクッと喉を鳴らして仰け反る一護の白い喉元に口づけながら、ギンはゆっくりと指を挿入させた。
「ああ……熱いなぁ……。もう…中トロトロや……。ほら、ボクん指キュウキュウ締め付けてはるよ…?」
「だから……っ、欲しいって………」
涙目でそう訴える一護に、ギンは酷く大人びた顔で言った。
「うん……。……知っとる。一護が、ボクん事求めてるんは、ちゃぁんと分かっとるよ…。寂しいなぁ…ココ……」
そう言ってギンは、潜り込ませた二本の指を引き出すと、それに添えて、もう一本ぐいっと一護の中に衝き入れた。
「……あぅ……っ!」
ぐんっと中を広げられる刺激と、容赦なく衝き入れられた指に、痛みよりも快感を感じて、一護の顎が綺麗に天を向いた。
「は……、あ……ギン…っ!ギ……や、もぅ……きてぇ………っ!」
そのままグジュグジュと中をかき回す指に、一護の感覚は翻弄されていた。
押さえきれない想いと欲望が混じり合い、純度を増して一つの思いだけに集約される。
今、ギンが欲しい。
一護が思っていたのは、ただそれだけだった。
後の事などどうでもよかった。
ただ、繋がりたい。
ギンが大人だとか、子供だとか、自分たちの目的だとか…そんな事はどうでもよかった。
ただ目の前のギンが、欲しくて欲しくて仕方ない。
こんな激しい情動は、誰にも感じた事はなかった。
身体を嬲られ、男を咥え込む事で満たされる自分の性。それ故に、セックスの際、こうして男を誘う言動をする事は一護自身よくある事だという認識はある。
でも、今の焦燥感と欲求は、そんな性衝動など遙かに超えるものだった。
「や……、も……っ、ダメ……っ!ギンっ、ギン………ギン────!」
この身体の中に受け入れたい。
そうしないと収まらない。
この自分が、ここまで誰かに欲情するなんて、今までの一護には考えられない事だ。
ゾクゾクする身体が止まらない。
「ああああ───っ!やぁあああああ………っ!」
なんでもする。
何をされてもいい。
だから、お願い───。
いつものように、誘う言葉一つ満足に吐けずに、一護はただ狂ったように泣き叫んだ。


一方ギンも。そんな一護の姿を目に、ありったけの力で唇を噛みしめていた。
食い込んだ歯が唇を食い破り、口腔に鉄錆のような血の味が広がる。
泣きわめき、すり寄るように密着する身体を無理矢理引き剥がし、力任せに押さえつける。握った両手首は、きっと明日には痣になっているだろう。
ギンの屹立もガチガチに固くなり、すでに限界が近くなっていた。
このまま一護の中に吐き出したい衝動に駆られる。それを押さえつけるのに必死だった。
先端からはひっきりなしに先走りが零れ、一護のものを濡らす。
その刺激ですらたまらないのか、一護は首を振り立てて、腰を揺らしていた。
「ギン……。なぁ…、もう……キテ………。お願………」
甘えたような声。それに誘われる。
それでも、ギンはふるりと一つ頭を振ると、冷静さを取り戻すように、肩で深く息を吐いた。
「……そないに欲しいんやったら、上の口にあげるわ……」
そう言ってギンは体勢を入れ替えると、一護の顔に跨がるように腰を落とし、濡れそぼった屹立を一護の口に押し当てた。
ぬるっと滑る液に乾いた唇を濡らされて、一護は誘われるように口を開きギンのものを咥え込んだ。
グンっと奥まで通されて、一瞬激しくむせかえる。それでも一護は衝き入れられたギンのものに舌を絡ませ、口全体を使って夢中で扱き始めた。
「ふ……すご………ええで……一護………」
一護の口内は熱くて、それだけでイキそうだった。
それをなんとかやり過ごして、ギンは自然と開き立てられた膝を両手で抱えあげ、隠された蕾が見えるように一護の身体を折り曲げた。
「ああ……、ホンマひくひくしてるわ…。一護のココ……」
ギンの言葉が届いているのか、それに応えるように、開き、きゅうっと締まった蕾に、ギンは迷わず舌を這わせた。
すでに蕩けていたそこは、一瞬ビクっと閉じたものの、また妖しく蠢きギンの舌を誘うようにぽっかりと口を開ける。
ぷちゅ、ぐじゅっといやらしい水音を立てて、蠢く濡れた秘肉がギンの視線に晒される。
こんなに蕩けきっていては、さすがに指だけでは満足はできないだろうと、視線を向けたギンの目に、あるものが映り込んだ。

「ん……ふ……、んん……っ。……ふぁ……っ!?……なに……?」
ギンのものをしゃぶっていた一護は、突然襲いかかった身体の裡を貫く冷たい感触に思わず声を上げた。
ずっしりとした質量のある…細身の冷たい何か。
それが何かしばらく一護には思い出せなかった。
そしてようやく思い当たったものに、一護は目を見開いた。
「ば……っ!お前、何して……っ!?───あっ……!」
「んー、まあ、物足りんやろうけど、これで我慢してな」
そう言って差し込んだものをずるりと引き出し、また奥へと戻していく。
「んぁ……っ!あ、ん……、や……ギン……っ、お前…………」
ほんの少し前まで、冷たいと感じていたものは、熱すぎる一護の体温を移され、今は熱いくらいになっていた。
それでも、ギリギリまで差し入れられて入り口に当たる部分はまだひんやりとしていて。そのギャップに、思わず身体が震える。
アナルの淵に当たる鍔。それは、ギンの斬魄刀だった。
さすがに抜き身ではなく、鞘に収められたままだったが、生涯を共にする大事な分身である斬魄刀をこんな事に使うなんて冒涜にもほどがある。
「バ…カ!やめ……ギン………っ」
いくら快楽に頭が飛んでいようと、さすがにこれだけはないだろうと、一気に正気に戻った一護が止めの台詞を吐いた。
だがギンは涼しい声で一護の内股に舌を這わせながら言った。
「別にボクの斬魄刀やし。気にせんでもええよ」
「いや……気にするもなんも……あっ……!バカ…、やめろ…っ…て……!」
ズッズッと軽く抜き差しを始めたギンの動きに、思わず声が上がった。
「ほら、一護ちゃんやて旨そうに飲み込んでるやん。キュウキュウに締め付けてんの、自分でもわかるやろ?」
そのままズルッと少し引き出すと、絡みついた秘肉が捲られピンク色の肉襞が露わになる。
「ココが悦んどるよ……」
「ヒァ……ッ!」
ピチャリと剥き出しになった粘膜を舐められて、一護から短い悲鳴が漏れた。その刺激でなお一層、中のものを締め付けてしまい、一護はよりリアルにその形状を感じるはめになった。
「ひ………っ!─────ッ!」
半分ほど抜き出された鞘は今度は勢いをつけて奥まで戻された。ズンッとした重みと、腸壁を突き破られるかというような強烈な刺激に、一護は声を飲み込んだ。
一護の敏感な粘膜をつるりとした鞘が擦りあげ、深く突かれる。両足が耳に付くでんぐり返しのような不安定な姿勢で内部を侵されて、一護は縋るものを求めるようにまたギンのものを口に含んだ。
「すごいなぁ…。なあ…ほら……わかる…?しっかり絡みついて離せへんの。入り口もヒクヒク痙攣しとるよ」
斬魄刀自身の重みと、誘い込むような一護自身との動きで、再び鍔の際まで咥え込んだ一護は、ギンに口腔を侵されながら甘い喘ぎを漏らしていた。
その様子を見ながら、ギンが密かに笑った。
「ボクなぁ…初めて始解したこれ見たとき、なしてボクのんだけ脇差しやねんて思うたんやけど…。これはこれでよかったんかもなぁ?…丁度ええトコに当たってるん違う?一護ちゃん」
「ん……む……んぅ……」
クスクスと笑うギンの声に、一護はギンのものを咥えたまま首を振った。
だが、一護が感じているのはギンの目にも明らかだ。深く咥え込ませたまま束を持ってグチャグチャと動かすと、一護の身体が面白いくらいに跳ね、内股をビクビクと震わせた。
「こんまま始解唱えたら、どうなるやろか……」
ゾロリと舌を這わせながら恐ろしい台詞を吐く。
ギンの斬魄刀の形状を知っているだけに、それがどうなるかは一護にも想像は付く。こんな半分理性が吹き飛んだ状態でそう言われて、冗談だとはわかっているのに、一護はその言葉にゾクっと背筋を震わせた。
「……あかんよ……そんな言葉に感じたら……」
それが快感の為なのか、恐怖がもたらすものなのか。当の一護にすらわからないのを、あっさり決めつけてギンが言う。
奥に封印されたもう一人の自分が抱く時によくいう言葉と同じ事を言って、ギンは子供らしからぬ声で低く嗤った。
「そろそろイきたいやろ?ボクもそろそろ限界や…。しっかりしゃぶってな、一護」
……両方で……と付け加えて、ギンが一護の喉に突き刺すように深く腰を入れてきた。
一護の体内に入る事のできない今、一護の口内はその疑似体験のようだ。ギンの猛った怒張に一護の口腔の粘膜が柔らかく絡みつく。
竿に纏わり付き扱きあげる舌。抜き差しする度に吸い付いてくる唇。熱く濡れた内側の粘膜。
その熱さはこの無機質な刀に絡みつく肉と同じ熱さなのだろうか。
そこにどうしても触れたくて、ギンは抜き差しする刀に合わせて、入り口を広げると自身の指も一緒に潜り込ませた。
「んんん─────!」
普段、今以上の大きさも受け入れられるとはいえ、急に広げられ増やされた質量に、一護は声にならない声をあげた。
広げられたアナルは元に戻ろうとするようにキュウっと収縮し、ギンの指に絡みつく。
一護の一番の性感帯である最奥のその箇所を鞘の先で突かれ、ギンの指で粘膜を擦られる。口は熱い塊で侵され、苦しい姿勢で声すら出ない。
熱は行き場を失ったまま裡に篭もり、それが益々一護を追い上げる。
気が狂いそうだった。
どこも彼処も余す所なく、ギンに犯される。晒け出される。
グチャグチャと激しく濁った音が鼓膜に響く。
次第に荒くなるギンの息づかい。
同時に、上下の注挿が激しくなる。
「─────ッ……いくで………」
「ふ………ん、ん─────っ!」
クッと短く息を詰めて呟いたギンの言葉と共に、熱い液体が口内を満たし、喉まで流れ込む。
一瞬、目の前がスパークを起こし、激しい快感が背筋を突き抜けた瞬間、一護も堪りに堪った熱を解放していた。



「お…前なぁ…!こんな事に斬魄刀使うなよッ!」
甘く狂おしい時間を経て、気怠い身体を二人でゆっくりイチャイチャと……と目論んでいたギンの期待は、正気に返った一護からあっさりと裏切られた。
いつもの説教モードに入った一護から「そこへ座れ!」と睨まれて、今ギンは襦袢だけを引っかけた姿で正座させられ、一護からお小言を貰っていた。
どうにもこうにも情け無い姿だ。だいたいまだ下帯だってつけてないのに。
ちらりと見上げると、一護もこれまたなんとも色っぽい襦袢姿だ。
だが、そんな事はお構いなしで、腕組みをしてズンッと立っている一護は「色っぽい」だのと言おうものなら説教が倍伸びると言わんばかりの怒りようだった。
「やって…しゃぁないやん…。他に入れるもんなかったんやし……」
言い訳のようにそう呟けば。
あれほど「欲しい」だの「我慢できない」だのと強請っていた欠片も見せずに……いや、むしろそれは別人だというようにあっさりと無視して、一護は益々眉を吊り上げた。
「だからって、斬魄刀入れるバカがあるか!」
一応真剣に怒ってはいるんだろうが、ギンにとっては何をどう言われたところで後の祭りだ。
それに…気持ちよさそうに喘いでいたのは一護自身だ。
たぶん、それに対しても怒っているんだろう。

───やれやれ。
まったく、こういう所が可愛くて仕方ないのだ。
いくら本質が醒め切っていたとしても、表面に表れる一護の性格は年下の自分からみても愛らしい事この上ない。
本当は斬魄刀なんてどうでもいいくせに、今まで死神として培ってきたものが一護にこういう台詞を言わせている。
まあ…それに、一護自身、自分の斬魄刀には絶対の信頼を置いているせいもあるのだろうけど。

せっかく二人で甘い時間を過ごせる貴重な時を、これ以上無駄にしたくない。
怒りたいだけ一護に怒らせた後、場を収めるようにギンは口を開いた。
「まあ…ええやない。これで一護ちゃん、仕事中もボクの斬魄刀みる度にあの事思い出すで」
ニンマリと笑ってそう返すと、真っ赤な顔をしてくわっと目を剥いた一護から、思いっきり頭を叩かれた。





   end



※えーっと、これって我慢っていうの!?
なんか段々エスカレートしちゃってるんですが?お二人さん。
まあ…肝心な事はしてないんですけど、「それだけ」やんけーーー!
本当に『我慢の子』なギンを見たいお方は、本編だけ見てた方がいいかも。
って…後の祭りですね…ごめんなさい!!