※表の市丸氏BD「秘密」のおまけ。「天上の華」の二人です。
要は二人のエロシーン(笑)
食べ物系とか若干スカ?のようなものもありますので
苦手な方は避けた方が無難です。
大丈夫な方のみ、どうぞご覧下さいませ。

──秘密・おまけ──




「…ん…、ダ、メ…だって…。ケーキ…」

リビングのソファに腰を落ち着け、「ありきたりで悪いけど…」と誕生日のプレゼントを渡し、中身であるネク
タイを見ながらどのスーツに合うかなどと一頻り話し終えて、いよいよデザートであり、本日のメインでもある
ケーキに移ろうか…という所で、市丸が一護を引き寄せて強引に唇を奪う。

あまりに早急な事の成り行きに、驚いた一護が拒絶を吐いた瞬間、見計らった様に市丸の舌がするりと滑り込んできた。
だんだんと深くなる口づけに次第に一護の頭がぼぅっとし始め、市丸の舌で敏感な粘膜を愛撫される心地よさに自分から舌を絡め始めて一護は『…ちょっと待て!』と思い留まる。
「も、う…っ!離せって、ギン!」
流されそうになる身体と頭を強引に振り切って、一護は市丸の胸を突っぱねると、不満そうに眉を顰める
市丸をキッと見上げて文句を言った。

「ケーキ、せっかく作ったのに食わないつもりかよ…」
目元に薄っらと紅を掃いて見上げてくる一護は、精一杯睨んでいるつもりなのだろうが市丸からしてみれば
可愛いだけだ。
いつもならそんな可愛い文句もさらりと聞き流してサクサクと事を進めるのだが、さすがに一護の努力を無駄にしてはマズイだろうと市丸が一護ににっこりと笑いかける。
「心配せんと。もちろん、ちゃーんと心して頂きます。せっかく一護ちゃんがボクん為に作ってくれたんやし」
「お…おう…」
そう返すと一護の頬がまたほんのり赤くなった。
こうやってさり気なく労われたり、褒められたりすると一護は弱い。
しかもお世辞ではなく本気で言われると尚更、元々照れ屋の一護は居心地悪そうにきゅっと唇を噛む。
そういう無意識の仕草まで市丸にとっては愛らしくて堪らない。

「──はい。たぶん…大丈夫な甘さだと思うんだけど…」

そう言って反応を伺うように、一護は綺麗に小皿に盛りつけたピースを差し出した。
普段はあまり甘い物を口にしない市丸だが、まったく駄目という事でもなく、適度に甘さを抑えたものならば
口に合うらしい。一護が苺のケーキなんてあまりにも狙いすぎだという気がしないでもないが、一護と出会ってからなのかそれ以前からかは知らないが市丸はとあるケーキ屋の苺のショートケーキが気に入っていて
「イチゴの味がする」と意味深な台詞を吐いていつも一護の顔を赤くさせる。
今回、その店で買う事も考えたのだが、やはり最初から最後まで手作りしたいと思いその味を思い出しながら何度か試行錯誤を重ね、ようやく出来上がったのがこれだった。

一口食べた後の反応を待つように、不安と期待が入り交じった瞳で市丸をじっと見つめる一護の視線の先で市丸がフォークの柄をすいっと一護に向けた。

「食べさして?」
「…は?…え、バカ…!何言ってんだよっ」
「え〜、ええやん。だぁれも見てへんのやし。最初の一口は一護ちゃんから貰いたいわ」
年甲斐もなく甘えてくる市丸に、何言ってんだと一瞬思ったが、よく考えてみれば今日は市丸の誕生日だ。
市丸の希望はなるべく叶えてはやりたい。
確かにあの家ではこんな事は恥ずかしくて出来ないし、二人っきりならまあいいか、と一護が差し出された
フォークを握ろうとした時だった。

「あ、ええわ。ちょっと一護ちゃん口開けて?」
そう言って市丸が一口大にしたケーキを一護へと差し出す。
何だ?先に味見か?と素直に口を開いてその固まりをパクリと口に含むと、次の瞬間市丸の唇が覆い被さってきた。
「む〜〜〜〜ーーーーー!!!!」
そのまま一護の口をこじ開け今口に含んだものを器用な舌で奪い取ってゆく。それを市丸は唇をつけたまま咀嚼し飲み込むと一護の口腔内も余すところなく舐め回し、最後に唇に付いた生クリームをぺろりと舐めとってようやく唇を離した。
「…うん。うまい。ボクの好きなイチゴの味すんで…一護ちゃん」
長い舌で見せつけるように唇を舐める市丸が、そう言ってニヤリと笑う。
ただでさえ色気のある男なのに、こういう仕草をされると思わずゾクリとする。
意識したくなくても閨の場面で何度も見慣れた表情を思い出して、思わず一護の奥がズクリと疼いた。
「ば……っ、ハズカシイことすんなっ!」
それを振り切るように大声を出した一護に、市丸がクスクスと笑った。
「どないしたん?顔真っ赤やで」
「お…前がっ!ヘンな事するからだろうがっ!」
濡れた唇を拭いながら真っ赤になって叫ぶ一護に、尚更市丸の意地悪い笑みが増す。
事の最中には結構大胆にもなるのに、日常の場面でそれを匂わす事をされると未だに一護はこうして何も
知らない子供のような顔になる。慣れるというか擦れるというか、情を重ねた分だけ恥じらいを忘れてゆく
人間が多いなかで、一護の反応は毎回新鮮で飽きる事がない。
そんな所が益々市丸を煽るのだということに、当の本人はまったく気づいていない。

「なあ…。今度は、一護…食べさして」
するりと一護の頬に手を伸ばして輪郭を擦るようにゆっくりと指を滑らせれば、一護の身体がふるりと震える。
クイっと顎を持ち上げて視線を合わせながら親指の先で唇を擦ると、一護の口から甘い吐息が漏れた。
「一護…」
誘うように名前を紡げば引き寄せられるように唇が重なる。
一護の甘い口腔を十分に堪能してから唇を離すと、恨めし気に市丸を見上げる瞳とぶつかった。

「…せっかく…作ったのに…」
「うん…。分かっとるよ…。せやから、ボクの好きなように食うてもええ?」
「…なに…?」
「両方いっぺんに味わいたいんや…」

そう言って市丸がそっと一護の身体を横たえる。
今の口づけで既に瞳が潤み始めた一護も今度は抵抗する事もなく市丸に身を預ける。
正直、せっかく頑張って作ったものがたった一口で終わってしまうのは寂しいものがあったが、ゆっくりと炙られるように灯された官能の灯は小さいながらも高い温度でジリジリと確実に一護の中を焦がしていく。
一度点けられた炎は市丸によってしか消すことができない。
愛する男から求められるという事実が、一護の脳をトロリと溶かしてゆく。
再び甘い口付けを落としながら器用に一護のシャツを剥ぎ取ると、何度か軽く唇を啄んで市丸の唇が離れていった。

シュッ

と、市丸に身を任せて瞳を閉じていた一護の耳が異音を拾う。
なんだと思い目を開けた瞬間、一護の両手が頭上で一纏めに括られた。
「ちょ…っ!ギン!何すんだよっ!!」
突然の出来事に吃驚して思わず叫ぶ一護に、市丸はいつもの食えない笑みをさらに深めてにっこりと笑う。
「ああ、ちーっと我慢しよな。こうせんと一護暴れてまうから」
「我慢…って…」
「大丈夫。痛い事とかせえへんし。それに、縛られるん嫌いやないやろ?」
ニヤニヤと人の悪い笑みでトンでもない台詞を一護に突きつけて、市丸が一護の腿に馬乗りになった。
「ば……っ!いいから外せコレっ!」
市丸の台詞に真っ赤になりながら一護が縛られた両手を突きつける。
これまでにも何度か手足を拘束されたまま抱かれた事はある。
そして、人には言えないし認めたくはないが、確かにいつもよりも快感が強い事も既に一護の身体は知っている。
確かに嫌いではないけど…、そして市丸のする事なら嫌がりながらも大抵の事は許せてはしまうけれど…。
何もこんな甘いムードの時にする事ではないだろうに。
「なに…するんだよ…」
暴れてしまう可能性があるって一体何をする気なんだと不安気に尋ねる一護に、市丸は一護を見下ろした
まま、すいっとテーブルの皿を取り上げた。
次の瞬間、苦心して作ったケーキが見るも無惨に一護の身体に落とされ市丸の大きな手でグチャグチャに
潰された。

「───な……っ!なにすんだーーーーっ!!!」

「ええ〜。やから好きなように食うてええ言うたやん」
一護の抗議も何処吹く風の市丸は、そのまま一護の身体にその残骸を塗り広めていく。
「お前…もしかして……」
市丸の行為の先を読み取った一護が飴玉のような瞳を見開いて呆然と言う。
それに返すように男くさい笑みで市丸が笑った。
「言うたやろ?ちゃぁんと心して食うて。でも今ボクが一番食べたいんは一護やねん。
やからいっぺんに食お思て」
「く……食いモンを粗末にすんなあああああ!!!!」
縛られた両手で攻撃するが、そんなのは予想の範疇だと言わんばかりにあっさりと躱されてしまう。
そして逆にその手は市丸の片手で頭上に縫い止められてしまった。
「バカッ!離せ、ギンっ!てめぇ…よくも…人の努力を……」
「無駄にはせぇへん、言うたやろ」
この場には似合わないピリッとした声で一護の言葉を遮る。
その迫力にぐっと喉を詰まらせた一護に市丸の唇が耳元に降りた。
「ええ子にしとり。ちゃぁんとどっちも残さず食うたるから…」
市丸のいつもより低く甘い声で囁かれると、反射的に一護の背に甘い痺れが走る。
せっかく市丸の為に作ったものがこんなコトに使われるなんてあんまりだと思う反面、市丸の甘い囁きに素直に反応している自分の身体を感じてしまう。
精一杯の抵抗を込めて、「ひどい…」と呟けば、耳元で市丸がクスリと笑った。
「いつもより気持ちようしたるから…堪忍な」
そう言ってピチャリと水音を響かせて一護の耳の中に舌を潜り込ませた市丸に、一護はもうこれ以上言っても無駄だと諦めと共に仕方なく身体の力を抜いた。


一護の官能を煽るようにピチャピチャと妖しい水音を響かせて耳朶を舐めあげ耳の穴に舌を差し入れて触れ合う肌と音から一護を侵してゆけば、一護が吐息と共に甘い声を漏らし始めた。
「…あ…ン……」
「…愛しとる…」
「ん…。俺、も…」
いつもより時間をかけて首筋から顎先、そして鎖骨へと舌を滑らせながら、市丸が胸元に塗りたくられた生クリームを丹念に舐め取っていく。
閉じた瞳に時々聞こえる咀嚼音がやけに官能的に響く。
クリームとスポンジでデコレーションされていた胸元を丁寧に舐め取られて、露わになった胸元の飾りは時折触れられる舌で、すでにふっくらと可愛く勃ち上がってほんのりと赤みを増していた。
「おや、こんな所にも可愛い苺があるで。真っ赤に熟れてて…美味そうや…」
「ば、か…っ。オヤジ臭いコト…言うな…っ」
「…オヤジて…。んな可愛くないコト言うおクチは可愛い声しか出せへんように躾んとあかんな」
「なに…言って…、ア…っ」
右の乳首を指先でキュっと摘みながら左の乳首を舌先であやすように舐めあげる。
それだけで一護は背を反らして、可愛い嬌声を上げた。
「ん…、や…ぁ…っ、アァ…っ!」
「ほら、可愛なった」

勃ち上がり過敏になった乳首にはほんの少しの刺激ですら堪らない快感を生む。
ジーンズの固い布を押し上げるように隆起した陰茎は押さえつけられる苦しさすら刺激となって、甘い疼きを一護にもたらしている。
上がる体温で溶けだした生クリームがトロリと一護の肌を滑る。
その感触にすら敏感に感じ取ってしまい、一護は思わず声を上げた。
「あ…、や…はぁ…ギ、ンぅ…」
「どないしたの…」
肌をすべるクリームの感触と市丸の舌。過敏になった胸への愛撫と未だ放り出されたままの熱。
一護の苦しさが分かっているだろうに、市丸はわざとそう言って唾液に塗れた飾りにふぅっと息を吹きかける。
「ひぁ……っ」
ビクンっと背を反らせた一護を愛しそうに見つめながら指の愛撫はそのままに、市丸が脇腹の辺りに垂れた
クリームを丹念に舐め取っていく。
下腹辺りにまで舌を這わせて塗りつけられた残骸をすべて拭い取ってしまうと、再び胸の飾りを口に含み更なる愛撫を施す。
「美味しかったで…一護……。一護の作ってくれたケーキも…一護の肌も……。
今日は特別甘くって…最高や…」
「アアァ……」
市丸の言葉に、はしたなくも感じてしまう。
こんな事で労われても嬉しくないと思いながらも、市丸の舌が指先が声が──一護の官能を煽ってゆく。
この肌に市丸が触れているというだけでたまらない愉悦を一護にもたらす。

「…ギン…す、き……」
震える舌で舌っ足らずに告げれば立ち上がった乳首を甘噛しながら市丸が答える。
「ボクも、愛してるで…一護。一護だけや…。ホンマ…欲しゅうて欲しゅうて…気ィ狂いそうになるわ…」
「は…、俺…も……。好…き、愛して…る…。も…ダメ…おかしく…な……」
一護の言葉に応えるように市丸が胸に絡めた舌で飾りを捏ね唇で吸い上げ、軽く歯を立てると一護が無意識に腰を擦りつけてくる。
市丸に開発されたそこは今ではそれだけで達してしまう事すらある。敏感になりすぎた身体が酷く苦しい。
未だ触れられない下肢の膨らみは既にはち切れんばかりにトロトロと蜜を零して下着を濡らす。
「ふぁ…も…や、だ…。脱ぐ…ぅ」
執拗に続く胸への愛撫と解放されない辛さで一護の瞳が涙で潤む。屹立し濡れそぼった性器を見られる事
よりも、苦しさの方が先に立って一護は市丸に強請るように言った。
「もう、イキそうなん?」
ぞろりと長い舌で赤く尖った蕾を舐め上げながら言うと、一護がコクコクと頷く。
「しゃあないなぁ…。いつもより敏感になっとるで?」
「あ…、だっ…て……」
まるで咎めるように言う市丸に涙で潤んだ瞳を向ける。
拘束されたりケーキを塗りたくられたりと、異常なシチュエーションも確かにいつもより官能を煽る要因では
あるけれど。それよりも、久しぶりの二人きりの空間なのだ。


市丸の屋敷は広くて、おまけに居住空間は広い中庭を挟んで対極にあるので最中の声を聞かれる心配などは無いと分かってはいても、やはり同じ敷地内に人が居る中ではどうしてもある程度の緊張が残る。
もちろん、一度追い上げられればそんな事は気にならなくなる…というか、気にしている余裕すら無くなるの
だが、やはり二人きりというのはそれだけで精神的な違いが大きい。
今回イヅルに我が侭を言ってこのマンションに来たのは、市丸の為だけではなくて一護自身の希望でもあったのだ。


「ほら、一護腰上げ」
片方の指で飾りを弄りながら、僅かに身体をずらせて市丸が下着毎ジーンズを引き下ろす。
勢いよく飛び出したペニスを愛しそうに見ながら市丸が胸への愛撫を再開する。
「あは…ぁ…。…ん、……や……っ」
ようやく触れられると思ったのに、そこには目もくれずに執拗に胸の飾りだけを責める市丸にガクガクと腰を揺らしながら一護が強請る。
その様子にふっと笑みを落としながら市丸が命じた。
「まだや。先にココだけでイき。乳首だけでもう…イケるやろ…?一護の可愛い姿…ボクに見せて」
「あ…あ、や、ァアアア……ッ」
その言葉と共に、キュっと一際強く噛まれ指先で捻り上げられ、市丸の言葉通り一護は白い蜜を吹き上げて達してしまった。
「ふ……、ぁ……」
ビクビクと射精の余韻に浸る身体に時間を与える事なく市丸が未だ蜜を零し続けるペニスを口に含む。
残滓を舐め取る市丸の舌と唇に再び一護のものが硬度を増した。

「可愛いかったで…一護。なぁ…一護の可愛いところ…もっとボクに見せて?一護がどんだけボクんこと
欲しがっとるんか…ボクんこと愛しとるんか…ちゃんと見せて。二人っきりやから…出来るやろ…?」
一護のものから口を離して一護の瞳を見つめながら言う市丸に、一護はコクリと喉を鳴らす。
その瞳を見つめながら、この部屋で市丸に初めて抱かれた日の事を一護は思いだしていた。


あの時も、同じ瞳でそう言われたのだ。

何もかも忘れて自分だけを求めて欲しいと───。


そして、その言葉通り、恥じらいも……理性すらも置き去りにして夢中で市丸を求めた。
常に生と死を行き来する市丸の生活。綱渡りのようなその状況の中で、唯一市丸が生を感じられるのがこの瞬間なのだろうと一護は誰から言われる訳でも無く分かっていた。
自分とこうなる以前にも、市丸は幾多の人間をこうして抱いてきたのだろう。それに嫉妬を覚えないでも無かったが、それ以上に一護はその刹那の生を求める市丸の心が悲しくて仕方なかった。
おそらく市丸自身はそんな自覚などないだろう。
生まれた時から市丸はこの生き方しか知らないのだ。
そして、生まれて初めて本気で愛したのは一護だけなのだという市丸の言葉に嘘などないと一護は信じて
いた。
身体が溶けあう程求め合い、獣のような激しいセックスを繰り返し、心と身体に市丸の愛情を刻み込まれた一護は身体と心でそれを知ったのだ。
市丸のセックスは激しい。
ほぼ毎日抱かれているのに、常に次はないかのように執拗に一護を貪る。
あまりの激しさに、翌日起き上がれない事もよくある事だ。
それでも、市丸がこの自分を必要としているのならそれすらも嬉しいと感じてしまう。


押し寄せる快楽の波と込み上げる愛しさに、一護はあっさりと理性を投げ捨てる。
見下ろす市丸の視線の先で、一護は市丸に答えるようにゆっくりと両足を左右に開いた。

「ギン…お前も…脱い、で…」
射精後のトロリとした表情で一護が強請る。
「…なんや…、彫物スミ見とうなったん…?」
情欲を宿した薄青い…氷の様な瞳で市丸が笑う。
市丸の瞳の奥に灯る情欲という名の妖しい炎。
その瞳に欲に塗れた自身を晒しながら一護はコクリと頷く。

「ホンマ…一護はボクの彫物スミ好きやなぁ…」
そう言いながら市丸がゆっくりと見せつけるように一護の前に素肌を晒してゆく。
細身でありながらも、しっかりと筋肉の付いた身体。
常に死線をくぐり抜けてきた男だけがもつ壮絶な雄の色香に一護の視界がくらりと歪む。
その歪んだ視界の先に映る市丸の胸元に棲む金色の瞳に射すくめられて一護は思わず声を漏らした。

「あ……」
「なんや…コイツに感じとるん…?なんや妬けるなぁ…」

理性を手放し欲情に塗れた一護の表情に市丸が口角をつり上げる。
揶揄うような市丸の言葉も既に耳に入っていないのか、一護はそろりと上半身を起こすと市丸の左胸に鎮座する蛇頭にソロリと舌を這わせた。
右の太腿から腰を伝いぞろりと背中へと這い上る一匹の大蛇。
それは左の肩口から胸へと這い、まるで市丸の心臓を今にも食いちぎらんばかりにカッとその獰猛な口を開けている。
初めてこの眼で見た時から、一護は市丸の身体に彫り込まれたその絵に魅せられていた。
市丸の背に散るその華も、市丸の化身のような大蛇の姿も──あまりにも綺麗で。
それを纏う市丸の裸身に一護は堪らないほどに欲情してしまう。

「…あ…んん……。ふ……」
ピチャピチャと淫猥な水音を立てながら一護が市丸の胸元に舌を這わす。
まるで、長く伸びた大蛇の舌に自分の舌を絡めるように、恍惚とした表情で舐め回す一護を市丸が見つめる。
「一護…」
「ん…ぁ…」
ぐいっと後ろ髪を引いて一護を引きはがすと、差し出された舌先から胸元へと唾液の糸が引かれる。
「一護、こっちもや…」
好物を途中で取り上げられた子供のように一瞬頼りなげな表情を見せる一護の頭をぐいっと引き下げて市丸が下肢へと促す。
「ん……」
既に固く勃ち上がっている市丸のペニスに一護は再び蕩けたような表情になり、根本から絡めるように舌を
這わせて亀頭の先を舐め回してからゆっくりと口に含んだ。
大きすぎる陰茎は全て収める事はできないが、一護は咽喉を開き限界まで飲み込もうとする。
収まり切れなかった根本は一纏めにされた両手で丹念に愛撫し、その下の袋にも手を伸ばして指で優しく
揉み込む。含んだペニスには舌を絡め口腔内のあらゆる粘膜を使って市丸の雄を扱き立てる。
鈴口から染み出した先走りの液をわざと音をたてて啜りながら、ねっとりとした愛撫から今度は前後に激しく頭を振り立てた。

ジュブジュブと淫猥な音を響かせて夢中で口淫を施す一護の耳に、市丸の欲情した声が聞こえた。
「…上手なったなぁ…一護…。なぁ…、ボクの…美味しい…?」
「ん…おいし……。ギンの…すごく…おいしい…」
ずるりと口から吐き出して鈴口から染み出る淫液を啜りながら一護がうっとりと言う。
見上げた先にぶつかる市丸の瞳に思わず腰が揺れる。
「あ……、もう…ちょうだ、い……。ギンの…欲しい…」
未だ触れられない後孔がヒクヒクといやらしく戦慄く。
じわりと奥に灯った疼きは、燠火のようにじりじりと一護を焦がしていく。
後ろで達する事を覚えた身体はもう射精だけでは満足などできない。
市丸の太いものでめちゃくちゃに中を掻き回して欲しいと一護は市丸の瞳を見つめながら誘うように竿を舐め上げた。
「ボクのん、しゃぶっただけで感じたんか。ホンマ、やらしい身体やな一護」
「ぁ…ん…」
くいっと口角を吊り上げてわざと責めるように市丸が言えば、一護の瞳に淫蕩な色が浮かぶ。
普段は一護に甘く、優しい市丸だが、彼の性癖は完全なSだ。
殊更甘く抱かれる時もあるが、欲情を感じれば感じるほど市丸の本性は露わになっていく。
そして一護も、そうされる事に酷く感じてしまう。

「ボクの…ドコに欲しいん?ちゃんと言い?でないとあげへんで」
言葉で責められる事に快感を見出し始めた一護の様子に、市丸の責めが益々エスカレートする。
「あ…後ろ…。後ろに…挿れて……」
市丸の言葉にゾクリと背筋を背徳的な快感が這い昇り、一護は市丸のものに頬ずりしながら市丸の望む答えを返す。
だが、市丸はくつりとした笑みを浮かべたまま醒めた視線を一護に向けた。
「後ろやとわからへんやろ…。誰がそんな事言え言うた?」
強請るように怒張に頬ずりする一護を髪を掴んでぐいっと引き剥がし、上向けたまま市丸が甘い声で冷たく言い放つ。合わさった視線の先で冷たく蒼い炎が揺れる。
市丸の声に言葉に…その瞳に、一護はゾクゾクと身体を震わせる。
「あ……。…ギ、ン……」
「ほら…。ちゃんと言い?一護の淫乱なお尻の穴が疼いてたまらんのやって。お尻ン中に射精して欲しいて。
ボクのんでぐちゃぐちゃにしてもらわんと頭おかしなるて…ちゃんと言い、一護」
「ふ…、あ、あぁ……」
いやらしい台詞で一護を煽り立てながら、それを言う事を強要する。
淫蕩に堕ちてはいても僅かな恥じらいは一護の中にはまだ残っている。だが市丸はそれを知っていてこうして一護に恥ずかしい台詞を言わせるのを好むのだ。
そしてそれを一護が口に出すまでは、決して一護が望むものは与えられないという事はすでに何度も経験している。
こくりと一つ喉を鳴らして、羞恥に顔を赤らめながら一護が怖ず怖ずと口を開く。
「お…願い…、ギン…。もう…挿れ、て…。一護の…お尻の穴に…ギンのおっきいの…挿れて……。
ナカぐちゃぐちゃに掻き回して…っ。も…疼いて…たまんな…。おねが…ぃ…。一護の…お尻の中に…
いっぱい射精してぇ…」
恥ずかしさと共に口を開いた一護だったが、その台詞を口に出すうちに次第と甘えた口調になり、表情が
蕩け出す。
いつの間にか羞恥すらも快感にすり替わり、言わされていた言葉は一護自身の懇願へと変わっていく。
身体も心も全て市丸一色に塗り替えられた一護が全身で市丸を求める。
「ええ子や…。もっと狂わしたるよ…一護…」
その姿に満足そうな笑みを落として、ようやく市丸が一護に覆い被さった。


「ん……っ、あ、アァ……ッ。やぁ…、も…ダメ…ぇ……」
膝が肩に付くほど身体を折り曲げられて、上を向いたアナルの入り口を市丸の長い舌が這う。
ヒクヒクとはしたなく開閉を繰り返す入り口にその舌は時折潜り込み、敏感な内壁をぞろりと舐め上げてまたゆっくりと引き抜かれる。
それと入れ替わるように二本の指が差し入れられ思わず締め付けそうになった中をぐいっと広げる。
「ああ…。締めたらアカンやろ。苺…潰れてまうで…?」
ガクガクと震える身体で市丸から言われるままに、息を吐き意識して内部を緩める。
一護のアナルの中には、先程手を付けずに放置されたままだった一護の分のケーキの苺が埋められてい
た。
市丸の指で、丁度前立腺に当たるように埋め込まれたそれが、先程からずっと一護の快感を煽っていた。
時折コロコロと指で転がされ、感じすぎた内壁がギュウっと収斂しそうになるのを無理矢理広げられると、前の射精感と同時に怖いくらいの焦燥感までもが襲ってきて一護の背筋を震わせる。

「…め……、だ、め……っ!ギ、ン…っ、も…イっちゃ……。お願、い…、イかせ…てぇ……っ」
射精の許しを市丸に必死で乞うのは、その根本をリボンで縛られているからだ。
パクパクと開く鈴口からひっきりなしに零れ落ちる先走りは、ゆるい糸を引いて一護の胸元を汚していた。
「…しゃあないなぁ…。もう我慢でけへん?」
市丸の言葉にコクコクと頷けば、差し入れられた指で、また中の苺を転がされた。
「……アアァッ」
その刺激に、一護の顎が天を向く。
一頻り一護の痴態を楽しんだのか、市丸が中で遊んでいた指を入り口付近まで引き抜いてぐいっと左右に
押し広げた。
「こんまま出してみ?…でないとイク時中締め付けて潰れてまうで…?」
「あ……、ふ……」
「ほら、急に力入れたらアカン。潰れてもうたら後が大変や…。こんな小さい種でも中で擦れてもうたら
内壁傷つく事もあんねんで。それに…そんなんなったらボクかて痛いし。
そうなったらココに挿れてやれんくなるやろ?」
市丸に見られているせいなのか、はたまた体勢のせいか、上手く排出できない一護をあやすように市丸が
言う。
「見せて…。一護ん中から真っ赤に熟れた苺が出てくるトコ…。そんまま口移しでボクに食わせて?
一護…言うて。ボクに『食べて』ってお強請りしてみ?」
「…や、ぁ…っ」
「言えへんのやったら、ずっとこんままやで。奥…疼いてたまらへんのやろ?射精もできん、奥も疼きっぱなしやったら一護狂ってまうかも知れへんなぁ…」
怖い台詞をさらりと言う。
そして、こういう時に市丸が言う言葉は、恐ろしい事に全て本気なのだ。
疑似とはいえ、ほとんど排泄行為を見られるに等しい行為に、いくら全てを知られている恋人といえども激しい羞恥が一護を襲う。
だが、射精感も、そしてアナルの疼きも既に限界に達していた一護は、その羞恥よりも市丸の言葉に従う方を選んだ。

「ふ…、ギ、ン……。出した…ぃ…。ぉ…ねが…、ど、したらいいか…わかんな…」
ポロポロと涙を零しながら市丸に縋る一護に、市丸は一護の身体を俯せて四つんばいに這わせると下腹を
そっとさする。
「大丈夫や。潰れんようにボクがちゃぁんと広げといたるから。一護はゆっくりイキんで。
ナカ締め付けんようにお腹に集中して……、そう…上手やで…」
「ん……ぁ……。ふ……」
「そう…ほら……もうすぐ出てくるで…。…一護、さっきボクが言うた事…覚えとるな?」
入り口付近に小さな塊を感じて、そのまま排出しようとした一護を押しとどめるように、内壁を広げる指とは
反対の指を1本差し入れて押し出そうになった苺を僅かに中へと戻す。
「あぁ……!」
市丸の行為にフルフルと頭を振る一護に、市丸は容赦なく少しずつ中へと押し戻してゆく。
「ほら…早よ言わんと、また最初からやで…?まあ、ボクは何遍でも一護の可愛えトコが見れるからええ
けど…。あんまり聞き分けないと台詞増やすで?
ほら、言い。『一護のいやらしい蜜に塗れた苺食べて下さい』て」
「や…、あ……」
市丸の言葉に、一護は涙声で拒絶を吐く。そんな事、言える訳がない。
けれど…、どうしようもない身体の疼きが一秒毎に一護の心を壊していく。
グリッと過敏になった前立腺に再び塊が押し当てられる。
「ああああぁぁーーーっ!」
射精を塞き止められたペニスは、色素が薄く隆起した状態でもまるで無垢な子供のようなベビーピンクの色をした一護の亀頭を真っ赤に腫れさせる。先走りには既に白い精液が混じり始め、ビクビクと震えながらただ解放を待ち望む。
「一護…言わへんの…?それとも…もっとやぁらしい言葉言いたいんで…煽っとる…?」
「…ちが…っ」
激しく頭を振りながら一護の涙がボタボタと零れ落ちる。
「言…ぅ…。言うか、ら…っ!だから…も…、許して…ぇっ…ギン───!」

「あ……はぁ…。…ぉ願…ぃ…。一護、の…、いやら、しい…蜜に…塗れた、イチ…ゴ…食べ…て…
くださ…い…。
アアア……ッ!も…おねが…い…!何しても…い…からぁ…イ、かせてぇぇっ!
ギンの…ナカに突っ込んでぇええ!」
大粒の涙を零しながら、途切れ途切れにようやくその言葉を言うと、背後で市丸がくすりと笑う気配を感じた。
「ええよ…。ちゃぁんと食うたる。そしたら、もう一度出せるな…?一護…」
「ん……」
市丸に促されるように、再び一護が下腹に力を入れる。序々に押し出されてくる熟れた果実がヒクヒクと妖しく収縮を繰り返す入り口に顔を覘かせる。
それに押し出されるように一護の淫液がトロリと入り口から零れ落ちた。
通常であれば女性のように濡れる事などないアナルは男を受け入れる悦びに慣らされて、まるで女性の膣のように淫液で濡れそぼっていた。

「あ…あああ……っ!ギ、ンぅ……っ!」
一護の切なげな嬌声と共に一護の淫液に塗れた赤い果実が次第に顔を出す。
くちゅり…とした音を立てて市丸が半分ほど顔を出したその実を唇で迎え入れる。
内側から押し広げられるように開かれた入り口に、遊ぶように唇と舌で何度かそれを味あわせて、ようやく
グチュっとした淫らな水音を立てながらその果実は市丸の口腔に収まった。
「ふ……、ぁああ……っ!」
異常ともいえる快楽に侵された一護が甘い吐息を漏らす。
その一護の姿を見下ろしながら、市丸は口内で潰れた果肉をそのままに一護へと口づけた。

市丸から流し込まれる甘い果肉と市丸の舌に自身の舌を絡ませて、一護は自分の淫液に塗れた果肉を喉を鳴らして飲み込んでいく。市丸の唾液と共に甘い果肉を流し込まれ、またそれを掬われて、もう一護は始めに感じた嫌悪も、背徳感すらもどうでもよくなっていた。
「あ…あぁぁ…。ふぅ…ん…。ギ……」
市丸の舌に残る甘く淫靡な味。それを存分に味わうように一護が貪欲に舌を絡める。
こんな背徳的な行為すら快感に変えて市丸を貪る一護に、市丸は昏い悦びを隠せないでいた。

長い口付けを交わしながら一護の身体がビクビクと反応する。
背中に回した手を一護の尻の割れ目にそろりと這わすと、一際大きくビクンっと背が撓り一護が甘く鼻を鳴
らす。
「そんなに…美味しいん…?一護…」
「ん……」
市丸の問いかけに一護は素直に頷く。
こんな背徳的な行為にすら素直に応じる一護に、市丸は言葉で犯すように一護の耳元に囁く。
「…なぁ…一護…。イったんやろ…?お尻の穴だけで…。射精止められてんのに、我慢でけへんようになって、この穴だけでイったんや…。ボクに排泄する所見られながら…自分の中から出たもんをボクに食われながら……。こんなん異常やて思いながら、もう…止まらへんかったんやろ…?」
「あ………」
市丸の言葉に頷くことさえしなかったが、一護の蕩けた表情と甘く漏れる声に市丸は一護がこの行為によって達した事を知る。
「ホンマ…どうしょうもない淫乱やな…一護は…。
こんなんでイケるんやったら、もうボクのもんいらへんのと違う?」
後孔の入り口にクプリと指を含ませて咎めるように言うと、一護は潤んだ瞳で市丸を見上げてふるりと首を
振る。
「や……。欲し…い…。ギンのじゃなきゃ…ヤダ…」
「こっちも、もう辛そうやなぁ…」
そう言って市丸がするりと濡れそぼった陰茎を撫で上げる。
ビクンと身体を震わせて身を擦りつけてくる一護に含み笑いを落として、市丸が一護の手首の戒めを解く。
「自分でしたらアカンで…。両足抱え」
市丸の言葉に促されるように、一護が自らの足を抱え上げる。
全てをその目に晒して一護の腰が誘うように揺れる。
「……おね…がい…。も、焦らさない…で…。もぅ…ここに…お尻に…ギンの、挿れて…」
涙目で苦し気に訴える一護に、市丸が額にチュッと軽い音を立ててキスを落とす。
「わかっとる。ちゃぁんと一護のスキなもんあげるよ」
「ん…」
ようやく満たされる悦びに一護の身体が戦慄く。
散々弄られたアナルも市丸の怒張を充てがわれると誘うようにヒクヒクと入り口を開く。
グプッと音を立てて市丸の亀頭が一護の中にめり込んでいく。
待ち望んだ塊に一護が歓喜の声を漏らした。

「ア…ア、アアアァーーーー」
「く…、一護…締め過ぎや…。そないに、ええの…?」
一護の締め付けを振り切るように一気に奥へと突き上げると一護の悲鳴が一層高くなる。
「あ……ッ、イイ…ッ、イ、……ぁ、あ、アアッ!」
「…ゆっくりナカ楽しむんは…後回しや…。ボクも余裕無くなってまうわ…」
妖しく絡みつき市丸の絶頂を誘うように扱き立てる内壁の蠢きに色事には慣れたはずの市丸ですら、くらりと目眩を起こしそうになる。
そのまま一気に抜ける寸前まで引き抜き根本まで差し戻す。
一護の両の足首を掴んで限界まで身体を折りたたむと、ガンガンと激しく突き上げる。
「ひ…っ、あ…、イ……。すご……っ、お、く…ああ……っ」
「ナカ…凄いで、一護…。めっちゃ熱くて…ボクんこと誘うとる…」
「…ふ…、ギン…ギン……っ。あ……、ギ、ン…も、ぅ……っ」
「一護……。一緒、イこか…」
「あ、ん……、…く…イク……ぅ……っ!も…もう、アアア……ッ」
激しい抽挿を繰り返しながら一護の感じるポイントを的確に突き上げてくる市丸の動きに、一護の頭が真っ白に塗り替えられる。
そして、市丸の尖端が一護の最奥を突き上げ、ペニスの戒めを解いた瞬間、一護が勢いよく白い蜜を吹き
上げる。
それと同時に内壁がギュウっと収縮し、市丸も一護の奥に熱い迸りを叩き付けた。



「…もう…ぜってーお前には何も作ってやんないからな…」
ぐったりとソファに横たわる一護が恨めしそうに市丸を見上げながら言った。
「そんな事言わんと…。機嫌直してや。それに…一護ちゃんかて、めっちゃ…」
「続き言ったらぶっ殺すっ!」
真っ赤になって叫ぶ一護に市丸は「はいはい」と肩を竦める。
二度の繋がりを終えて、ようやく一息ついた途端にさっきまで可愛い喘ぎを漏らしていた口が憎まれ口に
変わる。
せっかく、僅か3日とはいえ──誰にも邪魔されない貴重な時間なのだ。
一護の機嫌を損ねては元も子もない、と市丸は頬を膨らませて市丸に背をむけた一護の髪にそっと手を
伸ばした。

「なあ……。覚えててくれたんやろ…?」
「…ん…」
市丸の問いかけに一護が小さい声で答える。
「さよか…。ありがとな…一護」
「…うん…」



市丸と付き合って間もない頃、そういえば市丸の誕生日っていつだっけ…と何気なく聞いた時。
話の流れで誕生日の思い出話になったのだが…。


『ん〜、別になんもないなぁ…』
『なにも…って。なんか一つくらいあんだろ。別に…昔の彼女の話とかでもいいよ…。
昔の事だから…気にしないし』
『そうやのうて…。ホンマにないんよ…。まあ店関係の子らからはプレゼントとか貰たりはしたけど、別に
そんなん思い出でもないし…。彼女いうても寝るだけやしなぁ…。食事行ったとか、そんくらいやな』
『じゃあ…小さい頃は?ほら、イヅルさんも乱菊さんもいたんだろ?みんなで誕生日会とかしねえの?』


あの時の自分は、何をそんなに意地になって聞いていたのか。
苦笑する市丸を余所に、好奇心丸出しの状態で市丸に詰め寄っていた。
幼い頃の彼の事情を知るのは、その大分後の事だ。


『あ〜、まあなぁ…。でも、ボクと乱菊て誕生日近いやん。で、結局大人の事情ってやつで大概一緒なんよ。
そうなると、あいつ腐っても女ン子やろ。別にボクはどうでもええし、したら必然的にあいつの誕生日のおまけ…みたいな感じになんねん。それよりも、一護ちゃんはどうやったん?家族でお祝いとかしてもろたんやろ?』

そう。市丸からそう聞かれて、一護は懐かしいな…と思いながら、その話をしたのだ。


いつもは忙しい父親が、その日だけは大きな包みを抱えて早く帰ってくること。
料理上手の母がテーブルに溢れんばかりの料理を作っていたこと。
唐揚げだの、パスタだの、カレーだの…はては手巻き寿司まで。
和洋中入り乱れて、メニューの統一性などお構いなしで一護の好きなものばかり作ってくれたこと。
三人では食べきれない程の大きなケーキまで手作りで。
近所に響き渡るほどの音量で夫婦そろってバースディ・ソングを歌っていたこと。


ごく普通の一般家庭でのささやかな子供の誕生会。
一護のそんな話を聞きながら、『そういうのええなぁ』と笑っていた市丸。


『愛されて育ったんやね、一護は』


市丸のその言葉のもつ意味を知らずに、あの頃の自分はただ照れて笑っていた。

たかだか、1年ほど前の話──。


去年は日にちを聞いた時点でもう過ぎていたから、今年こそは市丸にあげたかったのだ。

一護が家族に祝ってもらった、あのささやかだったけれど幸福だった時間を。
母がしてくれたように、テーブル一杯の料理と大きなケーキで祝ってあげたかった。



「ホンマに、嬉しかったんよ。ボク。今まで生きてきて、誕生日が嬉しいて思えたんは初めてやったから」

背中越しに聞こえる市丸の言葉に、一護は首を捻って市丸を見つめる。
「明日、またちゃんと食おうな。頑張って食わんと、3日間ずーっとおんなしメニューやで、あの量…」
「…いいじゃん。この3日はずっとお前の誕生日会ってことで。…来年はもうちょっと量へらしてやるからさ」

来年も、次も、またその次も──。

一緒にいる限りずっとこうやって二人で祝おうと小さな約束を交わす。


「じゃあ、プレゼントは毎年ネクタイでええわ」
そう言ってニヤリと笑う市丸に首を傾げた一護の耳元に。

「ネクタイてな、『あなたに自分を捧げます』てイミあるんやで。知ってた?」

市丸が酷く男臭い笑みを落として誘うように囁いた。





※ 893設定初のエロシーン。普段はラブラブ甘々だけど、HはドSな市丸氏(笑)
ほら、ベッドヤクザって言葉もあるくらいだし、この方ほんまもんだから。
ケーキプレイなんて調子乗ったら、やりすぎた感が…。(そうでもない?)
書いてる途中で市丸氏暴走してどんだけ削ったことか…。
危うく調教までしそうになりましたよ(大笑)
最後のくだりは本当は表の話に乗せるべきだったんですが、入らなかったのでここで。
これ見ないと、なんで一護があーゆー行動に出たか訳分かんないですよね…反省…。