
「じゃあ、やっぱり朽木さんは知ってたんだ」
女性死神一押しの甘味屋にルキアを呼び出して、事の顛末を話したイヅルは
当然予想された答えにがっくりと肩を落とした
「私が一護の部屋にやっかいになっている時には、毎日のように来ていたからな…あの狐」
ふう、ヤレヤレと呆れたように言うルキアにイヅルの米神がぴくりと動く
「毎日!?…だから、瀞霊廷の何処を探しても居なかったのか… あんのクソ狐がっ!」
仕事をそっちのけで現世にせっせと通っていたのかと思わずイヅルの霊圧が上がる
「おい…吉良 なんか黒いものが背後から出てるぞ!」
まあまあと上昇するイヅルの霊圧を宥めてルキアは目の前の白玉あんみつを口に含んだ
「オマケにいつの間にかちゃっかりと黒崎君に手を出してるし…
って言うか、一体いつ会ったんだいあの二人」
なんとかどす黒い霊圧を収めて、一呼吸つくとイヅルは改めて問いかける
「うむ…なんでも一護が虚退治していたときにふらりと現れたらしいぞ
私はたまたま離れた場所にいて間に合わなかったんだが… どうもそれが初対面だったらしい
もっとも私はそれを後から聞いたから…
さすがに一護の部屋の窓から、あの狐顔がのぞいたときには
思わず飲んでいたきゃらめるまきあーとを吹き出したぞ …もったいなかったなアレは…」
「く、朽木さん?」
その状況になのか、はたまたきゃらめるなんとかにか思いを馳せるルキアに、
イヅルは戻ってこいと言うように名前を呼ぶ
その声に我に返ったルキアが再び説明を始めた
「とりあえず…私もあの時点で一護への死神の能力譲渡という重罪を犯していた身だし
対するあ奴は仕事をさぼってふらふらと一護の所へ通って来ているし…まあお互い見なかった事に
しようと言うことで手を打ったのだ まあ、それに対してはそなたには悪かったと思うが…」
「いえ…いいですよ 朽木さんのせいじゃないですし」
そう言いながら、手元のお茶をずずっと啜る
「正直、一護がいつあ奴の事をそういう風に想いだしたかは知らないのだ 一護も一々言わぬしな
ただ…、まあ、コホン そういう事になった時は…さすがに気づいたが…」
「ああ、浦原さん…でしたっけ?元十二番隊長の そこに避難してたんでしょう?」
「…さすがに一護の部屋に居る訳にはいかぬだろう…
しかもあの狐は出て行かないなら射殺すとばかりに目配せしてくるし…」
「なんというか…大変でしたね…」
はあ…と同情するように呟けば、ルキアもまったくだと言いながら残りの白玉を掻き込んだ
そして、ふと気づいたようにイヅルに視線を合わせる
「…吉良… まさかと思うが…お主もそうなのか…?」
そう探るように聞くルキアに、イヅルはぼんやりと遠くを見詰める
「まあ…正直言うとね… でも、もうなんかどうでもよくなって…」
「ああ、あのバカップルぶりに当てられたか」
「あの二人って…」
「ああ、現世の頃からあの通りだ 一護もなあ…初めこそはあの狐が寄ってくる度にバタバタ暴れて
いたが…いつの間にか慣れたのか慣らされたのか…覚悟を決めて開き直ったとたん、アレだ」
「…すべての元凶はあのクソバカ狐か…」
「おい、吉良… なんだかどんどん言い方が酷くなってるぞ」
「いいんですよ これくらい言ったってまるっきり堪えないんですから
で、…これからどうなるんですかねぇ…」
本人をよそに繰り広げられる争奪戦に思いを馳せる
「さあ…、とりあえずウチの猪突猛進義兄が突っ走っているからな…
あの人も50年ぶりの恋に頭が沸いてるし…」
「く…朽木さん…!?」
たしか朽木女史と言えば、大貴族の義兄の影に隠れて怯えてるような人じゃなかったか!?
というか、元々こんな性格だったのか!?
「まあ、今のところは一護もそっとしておいて欲しいようだから、しばらくはこのままだと思う
ようやく落ち着いてらぶらぶを堪能している時期だから…今は騒動に巻き込まれたくはないのだろう
…面倒だとは思うが、吉良も今少し静観していてくれぬか」
「…そうだね… まあ、僕はこの際業務さえ滞らなければ、もうどうでもいいけど」
「なら、一護に一言頼んだらどうだ?あいつの言うことならあの狐も大人しく聞くだろう」
「!そうだ!そうですね!たしかに黒崎君の言うことならさすがのクソバカ色ぼけ狐も聞くでしょうし」
ナイスアイディア朽木さん!
あの見事な操縦法があれば、少しはあの狐上司も真面目に仕事に勢を出すだろう
可愛い子供が狐に奪われたのはしゃくに障るが、三番隊にとってはこの上ない宝物を
手に入れたようなものだ
そうと決まればここは隊を守る副官の腕の見せ所
この先の騒動を前に、三番隊の為にも何が何でも一護の恋を守り通さねばと
イヅルは決意を新たにするのだった
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