黒一護シリーズです
   読まれる前にいくつかの補足を
   基本、原作通りに話が進んでいます。原作の裏設定のつもりでお読み下さいませ。
   一護裏切り設定ですが、一護自身が真っ黒という訳でもありません。
   まあ、多少は怖い子になってますが…。
   取り敢えず、これは「ギン一」なんだということを踏まえてお読み下されば幸いです。
   かなり長い話になりそうです。最終的にはどう落ち着くのかまだ本人にも分かってません。
   死神に対する扱いがかなりヒドイです…。
   それでもよろしければどうぞご覧下さい






太陽と月──そして星と野良犬





その日 現世は破面の襲撃を受けた



個別に離れた場所に現れた彼らに、現世在中の死神と一護は必然的に2〜3組に分かれて戦うことになる
一護の側にいたのは、恋次とルキア
その前に現れたのは、破面の中でも最下級のギリアン1体と、十刃と呼ばれる数字持ちが1体
ギリアンの方はなんとか倒せたが、十刃相手では、さすがに戦局は厳しくなる
ルキアも恋次もこれ以上戦えないほどボロボロにされ、唯一今剣を交えているのは一護だけに
なっていた
その一護も、受けた攻撃で激しく傷つき、体からは大量の血を流している

と、そこへ────

何もない空間を裂いて現れたのは───


白い装束をはためかせて、相変わらず不穏な笑みを貼り付けた銀色の髪
尸魂界動乱の元凶である三人の隊長格の一人
「市丸……ギン……」
「…市丸……」
倒れ伏したルキアと恋次が同時に声を上げる
まさか、今、このタイミングで敵の首魁のうちの一人が現れるなんて───
絶望的とも言える状況に二人が目を見開く

その時

「おせーよ、ギン────」

まったく予期せぬ言葉が二人の耳を打った



「ああ、ごめんなぁ 一護ちゃん」
相変わらず飄々とした態度で市丸が一護の側へ寄る
「まったくだぜ、てめーが遅いから、もう本気でコイツ殺ろうと思ってた」
もう…手ぇ抜くの面倒で面倒で……
コイツ…と目の前の水浅黄色の髪をした破面を指しながら文句を言う一護に、言われた破面も何の事だと目を剥いている
「ああ、グリムジョー、それ以上一護ちゃんに手ェ出したらあかん」
射殺すで……?
そう言って市丸はグリムジョーと呼ばれた破面に霊圧を掛ける

「一……護……?」
その遣り取りに先に我に返ったのはルキアだった
どういうことかと一護に説明を求めるように、問いかける
それをさっくり無視して一護は市丸に尚も文句をいう
「まったく、普段は傷ひとつ付いてもぎゃーぎゃー煩えくせして、放置かよ」
「そんなんやあらへんけど、久しぶりに体動かして一護ちゃん楽しそうやったし…
ジャマせんとこ思て」
ごめんなぁ
と拝み手をする市丸に、一護がふうっとため息をつく

「まあ…楽しかったけどよ… こいつの力も大体分かったし で、コレ何番?」
市丸に声を掛けながら、一護は傷ついた自分の体を光で包んで、受けた傷を自分で癒してゆく
「セスタや まあ、まだまだやねんけどな」
「お前で6かぁ… てか、お前もうちょっと鍛えろ 死神二人瞬殺できねぇでどうするよ」
怖ろしい台詞を淡々と言う一護に、ルキアも恋次も呆然とする

どういう事なのだ、一体 一護は今何を言った───?

「なんだよ…てめぇ……っ……ぐっ……っ!」
一護の台詞に訳が分からぬまま、口を開いたグリムジョーに市丸の圧がさらにかけられる
「ほんま口悪いなぁ… 一護ちゃんにそんな口聞いたらあかん
一護ちゃんが本気やったら、瞬殺やで?向こう帰ったらよう教えたるわ…
もう二度と一護ちゃんに傷なんか付けんようになぁ…」

まあ、付けよ思ても無理やけど……

そう言いながら、そのまま押し潰さんばかりの霊圧をかける
「ぐっ……!」
再び上がる市丸の霊圧に、耐えきれないようにグリムジョーがもがく
そこへ───

「ギン」

一言命じるかのように一護が声を発した
その声に、市丸の負荷がふっと掻き消える
「もう、いいよ 状況わかってないんじゃ仕方ねえだろ
どーせ藍染さんも何にも言わなかったんだろうし…
ほら、お前…グリムジョーだっけ、今回はここまでだ 先に帰ってろ」
はあはあと息も絶え絶えな破面に向かって、一護は退去を命ずる
それは──有無を言わさない圧力を秘めていた
今まで、完全に舐めきっていた死神とは一線を化すそれ───
完全に上に立つ者としての、命令───
それに、逆らう事もできずに、セスタの数字をもつ破面は怪訝な表情を浮かべながら、
重い体を引き摺って虚空へと姿を消した

それを見送りながら、銀色の髪を持つ反逆者が一護を促す
「んじゃあ、もう、ええな 一護ちゃん ボクらも行こか」
「ああ」
そう言ってその場を去ろうとする一護に、漸く我に返ったルキアが叫ぶ
「一護!!!!!」
その声に、面倒くさそうに一護が振り返った
「ああ?何?」
「どういう事なのだっ!!これはっ!!!」
それに対して一護はいっそ無邪気ともいえる仕草で首を傾げる
「どういう事って?」

「お前は………っ!」
「なんで、てめーが市丸と行くんだよっ!!!!!」
ルキアの声に被せるように恋次も吠える
「市丸っ!てめぇっ!一護になにしやがったっっ!!!」
瀕死の体を起こして、遙か上空に浮かぶ市丸を睨み付ける
それに対する市丸はいつもの飄々とした態度で答えた
「なにした…って 人聞き悪いなあ… ボクはなぁんにもしてへんよ?」
「うるせえっ!!てめぇが何かしなきゃ、一護がお前と行くわけないだろうがっっ!!!」
「うるせえよ、恋次」
ぎゃんぎゃんと吠えつく恋次に、ああ、やっぱりコイツ犬みてぇ…とウンザリしながら
一護はすっぱりと切って捨てた

「……一護……?」

その言葉に漸く恋次も理解する
一護は、正気なのだと
自分の意志で、ここを去るつもりなのだと
一護自身の意志で、自分を、仲間を、すべて裏切る気なのだと

その事実に愕然としたまま言葉を失う恋次を置いて、内心の動揺を押し隠してルキアが尋ねる
「どういうことなのだ……一護……」
愕然と自分を見つめて固まる恋次からルキアに視線を移し、一護は仕方ないというように
深々とため息をつく
「どう…って…、見たまんま てか何が聞きたいんだお前?」
怖ろしいくらい普段通りに一護が答える
「理解…できんな…… 大体、お前はいつから市丸ギンと知り合いなのだ……?」

ルキアが後で聞いたところに寄れば、一護と市丸が対峙したのは尸魂界でのルキア救出時の
白道門であったはず
その時も、ただ刃を交えたに過ぎず、市丸の神鎗を受けて門の外に弾き出されたと聞く
その後の動乱での双極では、会話などする余裕などなかったことはその場にいた自分が
一番良く知っている

なのに、なぜ、こうも親しげなのだ───?
一体、いつ、どこで、この二人はここまで親密になったのだ?
現世も、尸魂界も、仲間も──すべて、裏切るほど───

疑問ばかりが渦巻くルキアの頭に、答えは、あっけないほど簡単に訪れた
一護の言葉に寄って

「いつから…って、昔から」

「………昔………?」

「ああ、もうええやん ルキアちゃんなぁ 一護ちゃんと出会うた時気づけへんかった?
一護ちゃん、死神の声も聞こえるし姿見えるし、触れんねんで?」
「…気……づく……?」
「だからさ、俺が死神に会ったのは、お前が最初じゃねぇってコト」
「………!!」
あっさりと言い放つ一護にルキアの目が見開かれる
「そんなことお前は…ひとことも……っ!
だいたいお前は死神は一度も見たことがないと言っていたろう!」

「ああ、それ嘘」
激高するルキアに一護があっさりと答える
「嘘…だと…」
「んー、まあ…正直あん時はよくわかんなかったけどさ、こいつが」
コイツと市丸を指す
「もし自分以外の死神と会っても黙っててクレって言うからさ」

「………なぜ……」
「え〜、やって、せっかく一護ちゃんに会いに現世来てんねんで?
バレたら色々面倒やん しかも死神やとボクやってすぐに分かるやろ?」
「しかし…一護おまえは……っ 何も知らなかったではないか!」
なにも── 死神の役目も 尸魂界のことも 虚の事も  
「だって、言わねえんだもん コイツ」
そう言って再び横に並ぶ市丸を指さす

「俺が死神の役目の事なにも知らなかったってのはホントだぜ?尸魂界の事とか虚とかは
流石に知ってたけど… まあ、虚の事に関しては別の意味で昔から知ってたけど、
実際姿みたのはあん時が初めてだよ」
「……どこからがホントなんだよ……」
淡々と話す一護に絞り出すように恋次が声を上げる
「なにが?」
その声に一護が首を傾げる
「てめーはルキアを助けに尸魂界まで来た 俺と戦って…朽木隊長とも戦って……っ!
死ぬ気で処刑を止めたんじゃなかったのかよっっ!!!
それも芝居だったのかっっ!こいつらの計画も、ハナから知ってやがったのかっっ!!!!」
恋次が悲痛な声で叫ぶ
と、その声とは対照的に、市丸の口からのんびりとした響きが返る
「知るわけないやん」
だが、その調子とは裏腹に、声には僅かな苛立ちが含まれていた

「一護ちゃんはな、純粋にルキアちゃん助けたろ思て尸魂界行ったんよ
ルキアちゃんの処刑死ぬ気で助けたんはウソやない
もちろんボクと白道門で会うた時も、一番びっくりしたんは一護ちゃんや
ボクは…まあ、計画もあったけど、一護ちゃんに早う会いとうてあそこ行ったんやし」
その言葉に思い返したように一護が笑う
「あん時はさすがにびびったぜ 門開いたらいきなりお前居るし しかも夜一さんが一緒だったから
知り合いだとバレやしねーかとひやひやした」
「やって、早よう一護ちゃんに会いたかってんもん」
「だったら…いつから……」
「藍染さんの計画知ったのは、まんま双極 …っていうか…こいつらが尸魂界裏切るのは知ってた」
一護の説明に、どういうことだと言うように険しい表情の二人に、市丸が苛立ったように深いため息を
落とすと、一気に話し始めた

「もう、めんどいなぁ… やから、一護ちゃんが知ってはったのは、ボクら三人が元々連んでて
いずれ尸魂界潰そ思てたって事や その引き金にルキアちゃんがなったんも、ルキアちゃんと
一護ちゃんが知り合うたんも単なる偶然や
まあ、ボクは全部分かってて黙っとったから、後で一護ちゃん怒るやろなーとは思とったけど…
やから、崩玉の事もその為にルキアちゃん処刑するいうんも一護ちゃんは知らんかってん
やってせやろ?一護ちゃんはルキアちゃん追っかけて尸魂界きたんやし、
ボクらの動向なんて、瀞霊廷居った阿散井くんも気づけへんかったやろ?」
その市丸の言葉を引き継ぐように一護が説明する
「俺が全部の状況を知ったのは、現世に帰ってこいつに聞いてから もう、平謝りでさ、こいつ
でも、まあ、状況考えたら確かにあのタイミングしかなかったし、利用されたのは腹が立ったけど
まあ、俺が行ったお陰で計画がうまく行ったんなら、まあ、いいかって」

「…まあ…いい……?」
軽い調子で言う一護に、ルキアの眉が顰められる
「そうだろ?俺は俺で当初の目的…ルキアの処刑は止めれたし、こいつらはこいつらで
崩玉手に入れて計画通り出奔したし… 結果だけみれば上々じゃね?」

その言葉にルキアが哭えた

「……だったら…… だったらなぜ私を助けた!」
「だから、言ったじゃん借り作りたくねえんだよ」
「…え…」
「お前に世話になったのは確かだし、お前のお陰で俺は死神に目覚めることができた
俺の運命を変えてくれたのはお前だろ、ルキア
お前には感謝してるよ でなきゃ、コイツは俺を置いたまま行く気だったしな」
そう言って一護が片頬笑む
「……一…護……?」
「俺は借りを返せねえまんまじゃ嫌だったから、お前を助けに行った
そんだけだって最初から言ってたろ?」
俄には信じられない台詞を、恐ろしく軽い調子で言う一護にルキアがギリっと唇を噛む
「…いずれ…裏切るとしてもか……
いずれ……敵として殺すとしてもかっ…!」
「…裏切るって…… 裏切ったつもりも俺はねえんだけどな
でも、それはそれ、これはこれ、だろ 大体ルキアはともかく、恋次、お前とは最初から敵じゃん
ルキア救出すんのには協力しあったけど、俺は尸魂界の味方だったことは一度だってないはずだぜ?
だいたい俺らを旅禍として処理しようとしたのはそっちが先だろ?
んで?死神から裏切り者が出たからって今度は協力しろだ?
そっちの言い分の方が勝手だって、なんでわかんないかね」
これだから組織ってやつは嫌いなんだよ…と一護が苦々しく吐き捨てる

「もうええやん、一護ちゃん あっこは昔からそういう所やし
ジャマや思たら排除する 利用できる思たら、とことん利用する
そうやって表面だけ安穏と過ごしてきたんや 今更何言うた所でなーんも変わらん」
「市丸…てめぇ……」
絞り出すように吠えつく恋次に、市丸がふっと口角をつり上げる
「なあ、阿散井くん 君かてそうやったやん
ルキアちゃん捕縛も、処刑するいうんも四十六室の決定や言うたら従わなしゃあない思たやろ?
一護ちゃん来るまで処刑止めようとか思わへんかったやろ?自分の大事な幼なじみやで?」

「ギン、やめろ」

恋次に辛辣な言葉を投げつける市丸を一護が制する
だが、それは事実を指摘されて唇を噛む恋次への同情からではない
その証拠に、市丸の言葉に歯がみする恋次を見る一護の目は、どこまでも冷たく、醒めていた

所詮、死神なんてその程度だと言わんばかりに

そして、二人に冷たい視線を向けた後、興味が失せたというように踵を返す一護にルキアの声が
追いすがった

「…待て……、一護……」
「なに、まだなんかあんの…?」
それに、ひとつ大きなため息を吐き、一護が面倒くさそうに振り返る
「尸魂界はいい…元々おまえには関係のない場所だ だが、現世は違うぞ一護!
お前がこやつらに付くということは、現世をも裏切ることになるのだぞ……!
わかっておるのか、一護…っ!!」
その台詞に、一護はやれやれと肩をすくめる
「なあ…、ルキア お前人の話ちゃんと聞いてないだろ」
「……なに…?」
「だから!俺は誰も裏切ってるつもりはねえって、さっきから言ってんだろ
ああ…めんどくせえ… まあ、俺がどう思おうとてめえらが裏切りっつったらそうだから別にいいけどよ
あのな、ルキア…俺はさっき言わなかったか?俺を死神に『目覚めさせた』のはお前だ…って」
「それが………っ ……!?」
「ようやく気づいたみてえだな そうだ、俺は、お前から死神の力を『もらった』訳じゃねえ
元々”こう”なんだよ、俺は」
「……どういう……ことだ……?」
一護の台詞にルキアの中で僅かに引っかかっていた言葉が過ぎる

そう言えば、一護はさっき変な事を言わなかったか?
虚に関しては「別の意味で」昔から知っていたと

「…一護…虚の事は昔から知っていたと言ったな……?」
ルキアの言葉に、一護は一瞬目を見開く
そして、まるで悪戯を見とがめられた子供のように、ガシガシと頭を掻いた
「あー…、やっぱ気づいてたか うまい具合に恋次が吠えだしたんで
そのままスルーしようと思ってたんだけどな…」
「どないするん?一護ちゃん」
「まあ、もう別にいいか どうせいつかバレるし ってか王族特務あたりはもう知ってんだろ」
「…せやね… まあ一護ちゃんがええならそれでええんちゃう」
のんびりと会話する二人に、さすがに冷静になろうとしていたルキアもキレた
「い…いいかげんにせぬか!どういう事だと聞いておるであろうっ!!」
「おい…あんまり興奮すんなよ…ルキア 話終わるまでに…死ぬぜ?」
「ルキアちゃん、真血って聞いたことあらへん?」
市丸の台詞に、二人の目が見開かれる

「…まさか……」
「そうや、ルキアちゃんのお兄様みたいに、死神を親に持って生まれてくる子ぉのことや
一護ちゃんのお父はんは元、死神 一護ちゃんはその血を引く正真正銘の真血や」
「俺がそれを知ったのは、死神になってからだけどな……
どんなにあいつが隠してても、同じ匂いはわかる 霊圧だのの問題じゃない
”わかる”んだよ、本能的に」
「本来なら、一護ちゃんは死神として尸魂界で生まれるはずやった
それが、人間として生まれてしもた 裡に死神の力を持ちながら、や」
「それか、生まれなかったか…だけどな…
でも、なんの因果か俺は生まれてしまった
俺はな、ルキア… 誕生した瞬間から何処にも属してなんかいねえんだよ
俺は人間で、死神で、虚……元々すべての属性を持ってるんだ」
「すべて…だと…?」
淡々と一護から語られる言葉にルキアも、そして恋次も耳を疑う
一護の力がおよそ人間の子供が持つものではない事くらいは十二分に知っている
だが、すべての属性を内に含む存在など、今まで聞いたこともない
「そうだ 俺が元々虚の事を知ってたってのは、純粋な力としての意味でだ
まあ、あの頃はその力の元になるもんの名前とかは知りもしなかったけどな
だから、死神になってからなんだぜ、俺の中にある相反する力が『死神』と『虚』
だって認識したのって」

「俺が死神の力に目覚めてから、最初は眠ってたアイツ…虚の力もどんどん
でかくなるし、ほんと制御するの大変でさ… 半分死神化した魂魄じゃあ
バランスとるの大変だって、尸魂界で実感したよホント
おかげで現世帰ってきてから中のバランス崩れたままだったから…、こうなったらもう
取り込むしか手はねえし だったら、いっそのこともう融合して覚醒しちまった方が早えしさ」
「融合…覚醒…?一体何の事を言っておるのだ…?」
訳が分からないと言うように問いかけるルキアに、一護は面倒だと言うように肩を竦めた
「そこまではお前が知る必要はねえよ ただ、今の俺は、もうお前らが知る何者でもないって事だよ
だから、たまたま現世で生まれはしたけど、俺にとってはどの世界も俺の場所であって、そうじゃないんだ だったら、俺がどこを選ぼうと俺の自由だろ?なんで非難されなきゃなんねえんだ?」
「それが…お前が裏切る事と関係しているというのか…?」
「だから…、裏切ったつもりなんかねえって何度言やわかんのかね
じゃあ、お望み通り、俺がココにいてもいいけどさ… その代わり今度は現世が戦場になるぜ?」

「何だと……!?」

思いもしなかった一護の言葉にルキアが目を見開く

「あんなあ、ルキアちゃん さっきのボクらの話聞いてへんかったん?
一護ちゃんは、もう、死神やない ましてや”仮面の軍勢”なんかでもない
まったくの別次元のもんや
つまりな、ボクらとはまた別の意味で尸魂界には驚異やねん
そんな存在、尸魂界が許す訳あれへんやろ?
賭けてもええで、恐らく王族特務あたりにはもう一護ちゃんの抹殺命令が下っとるはずや」

「…そんな…!」
「んな事聞いてねえぞ!!」
まさかとも思える台詞に死神二人がそれぞれに声をあげる

「…あたり前やん なんの為の王家直轄の部隊や思とるん
恐らく今回は隠密機動でも手えだせんやろ なにせあっこは二番隊直轄やから」
呆れたように言う市丸の言葉を一護が引き継ぐ
「俺の存在は、尸魂界にとっては『存在してはならないもの』
つまり、俺が何者かは公にはできねえのさ
だから、仮にも死神代行として、護廷十三隊と行動を共にしている俺を護廷のやつらに
抹殺させる訳にはいかねえって訳」
「せや、まあ、適当な理由もないし、それにココで潰し合いにでもなれば
その隙に藍染さん出てくるやろうしな
尸魂界の今の表立っての驚異はボクらやろ?やから護廷はそっちに集中させて、
一護ちゃんには特務あててんよ」
「まあ、どのみちもう限界だしな 取り敢えず今は力押さえてるから向こうも俺が
覚醒したかどうかの確信はねえだろうけど… 俺もそろそろ面倒くさくなってきたし…」
そう言って一護はひとつ深いため息を吐く

二人から交互に語られる事実に死神二人は混乱し、言葉をなくす
そこへ、止めとも言える台詞を市丸が吐いた

「裏切った言うんなら、尸魂界のほうや
まあ、元々一護ちゃんはあんなトコ信用もなんもしてへんかったけどな」
「そう言うコト お前らのコトは嫌いじゃなかったけど、やっぱりお前ら骨の髄まで死神だって
つくづく思うよ…」
そう言った一護の顔には、最早なんの感情も浮かんではいなかった

「じゃあな、ルキア、恋次
取り敢えず今は殺さないでおくよ せいぜい尸魂界守って頑張んな 
だけど、次に会った時は容赦なく殺るぜ?それまでせいぜい力つけとけよ」

そして、一護は踵を返し、裂けた虚空に向かって歩を進める

「いくぞ、ギン」

振り返ることなく放たれた声に、市丸が後を追う
空間が閉じる瞬間、市丸は、呆然と見送る二人の死神にひらひらと手を振った

「ほな、またな」

そして……、その裂け目は二人を飲み込んだまま唐突に口を閉じた





※一護裏切り当日
ルキアと恋次ヒドイ扱いで済みません…
一護の正体に関してはこれから先で
序々に明かされる予定です